『トルコ貿易赤字減少の理由』

2018年9月30日

 

 トルコの貿易赤字が8月段階で、減少するという朗報が届いた。しかも、それが59パーセントというのだから、驚きではないか。これはトルコ政府の正式なカントリー・リスクのレポートであり、信頼に値しよう。

 その報告によれば、今年8月段階の貿易赤字の減少は、59パーセントであり、輸入は22.7パーセント減少し、148億ドルになったということだ。他方、輸出は6.5パーセント減少し、124億ドルになっているということだ。このため貿易赤字は、59億ドルから24億ドルに下がったということだ。

 輸出内容はといえば、ドイツに対しては11.2億ドル、イギリス9億ドル、イラク6.48億ドル、アメリカ6.37億ドルとなっている。

 輸入については、ロシアからの輸入が15.5億ドル、中国からの輸入は14.4億ドル、ドイツからの輸入は12.7億ドル、アメリカからの輸入は9.2億ドルとなっている。

 今回のトルコの貿易収支の改善()は、トルコ政府の政策や、技術的な貿易収支改善努力の結果ではなく、実は輸入が減少したからであった、ということだ。それだけトルコ国内の景気は悪化しているということであり、欧米の贅沢品の輸入が、動かなくなったということだ。

 トルコは外国からの借入金で、派手なメガ・プロジェクトを進めてきていたが、ここに来てメガ・プロジェクトも、しぼみ始めているし、大型プロジェクトは工事半ばで、中止しなければならなくなるのではないか、という懸念も出ている。

 民間でも各企業の借金による規模拡大が、行われてきたが、返済金額がどんどん増え、どうして返せばいいか、分からなくなっている、ということだ。そこにリラの暴落が起こり、外貨での返済では、返済金額が40パーセント程度。増えているのだからたまるまい。このためトルコ政府は、民間企業を支援するために、特別の資金貸し出しを、始めている。

 トルコの実情はあまり表には出ていないが、トルコ国内では倒産企業が、多くなっているということだ、しかもそれは大手から中小企業まで、広がっているということだ。高金利のトルコに、外国が資金を貸し付けることは、利益が生まれるわけであり、トルコ企業への貸付も安易に、行われてきていたということだ。

 そうしたことがあるため、最近ではヨーロッパ諸国がトルコ経済の崩壊を強く懸念するようになった。巨額のヨーロッパのトルコ官民への貸付が、返済不能になれば、ヨーロッパ各国政府と企業が、窮地に陥る危険性があるからだ。

 ヨーロッパ諸国のトルコに対する強い関心と懸念は、トルコからのシリア難民の、流入問題だけではないのだ。エルドアン大統領は国連総会の後、ドイツを訪問しメルケル首相と話し合っている。2人が仲良く話し合っていることに、ドイツの大統領は不快感を抱いたのであろう、『彼を受け入れたことは、トルコとの関係が、改善したということではない。』といった嫌味な発言をしている。

 トルコが抱えるインフレ、リラの下落、失業率の上昇、物価高といった経済リスクが、今後のトルコの政治にどう影響するかが、焦点であろう。