イランとイラクの国境に近い、イランの南西部に、アフワーズというところがある。そこの住民のほとんどは、スンニー派でありアラブ人だ。このことから、サダム・フセイン大統領はイランとの間で起こった、1980年代の戦争で、『アフワーズのアラブ人をイランから解放す。』と叫んだのだ。
その事はイラン政府によって、アフワーズの住民が差別され、監視下に置かれてきていたことを意味する。最近でも水不足や物資不足で、抗議デモが起こっていたし、それに対するイラン政府の弾圧対応が、外部に報じられていた。
そのアフワーズで土曜日に行われた、イラン・イラク戦争勝利記念の、軍のパレードに対し、4人のガンマンが銃撃を加え、イラン人の死者は民間人を含め24人にのぼり、負傷者は60人に達した。
誰がこの襲撃犯なのか、ということについては諸説ある。まずはIS(ISIL)が犯行声明を発表し、死者は24人ではなく29人だと発表した。これはトルコのフッリエト紙が報じたものだ。同紙はどちらかといえば、中立的な立場を採っている。
他方、襲撃犯側はと言うと、襲撃犯は4人であり、そのうち3人が現場で射殺され、1人は重傷を負い、逮捕されたということのようだ。従って、逮捕された人物を取り調べれば、犯行組織が何処なのかは、近く明らかになろう。
イラン政府は現段階では、実行犯はIS(ISIL)のメンバーではないか、と考えているようだが、それ以外にも犯行に及ぶ可能性のある組織は少なくない。イランに敵対的な組織としてはクルド、バルーチ、トルコマン、アラブ・イラン人などが上げられる。
クルドからはMKOが上げられようし、バルーチとはパキスタンとの国境地帯で、戦闘を何度も展開してきている。アラブ・イラン人とは、アフワ-ズの住民のことだ。トルコマンはイラン北部の住民であろう。
もう一つ興味深い組織名が出てきている。それはイラン政府が明らかにした、『アルアフワーズエ』という組織であり、名前から分かるように、彼らはイラン南西部アフワーズの住民によって、組織されたものであろう。イラン政府はこの組織を、サウジアラビアによって支援されている、と見ている。
述べるまでも無く、イランとサウジアラビアとの関係は、極めて緊張した状態にあり、まさに一触即発状態にあるわけだから、今回のようなテロが起こっても、何の不思議もあるまい。イラン政府は時間が経過するに従い、外国の関与から、サウジアラビアの関与に、傾いてきているのではないだろうか。
サウジアラビアがテロ事件の背後に、いることが明らかになれば、イランはサウジアライアに対する、報復を考えよう。それがホルムズ海峡の封鎖に繋がるのか、あるいはサウジアラビアへの軍事攻撃なのか、またその攻撃は、軍事基地が対象になるのか、石油施設になるのか。
いずれにしろ、極めて危険な状況になってきている、ということであろう。