『ナゴルノカラバフ問題が再燃』

2018年9月16日

 日本人にはあまりなじみがないだろうが、ナゴルノカラバフ問題というものが、トルコ、アルメニア、アゼルバイジャンの間に、横たわって久しい。これは、アゼルバイジャン領のナゴルノカラバフが、アルメニアによって支配されている問題だ。

 ナゴルノカラバフの20パーセントの土地が、アルメニアによって占領され、100万人前後のアゼルバイジャン人が、帰国できないでいる。192年に起こったホジャリ紛争では、数百人のアゼルバイジャン市民が殺害されている。

ホジャリ市はナゴルノカラバフの街だが、1992年の226日に起こった紛争で、アルメニアが占領したものだ。アゼルバイジャン市民の613人が殺害され、487人が負傷した。

 このナゴルノカラバフ問題が、いまになって再燃したのは、914日に、アルメニア軍とアゼルバイジャン軍との間で、戦闘が再開したからだ。戦闘はトウズ、タルタル、アグダブで起こった。

 トルコはこの問題に深い関心を寄せているが、それはオスマン帝国時代に、トルコが多数のアルメニア人を虐殺した、とアルメニアが非難し続けていることに、起因している。トルコにしてみれば、アルメニアもアゼルバイジャン人を、殺しているではないか、という論法であろう。

 このアルメニア人大量虐殺問題に対する、トルコ側の反論は、少し無理はあるのだが、虐殺をしたのは、当時、トルコ国民であったアルメニア人が行ったものであり、トルコ軍は関係無いとする立場だ。それはある程度起こりえよう。

 今回、トルコのエルドアン大統領がこの問題に、深い関心を寄せているのは、トルコとアゼルバイジャンとの、経済協力を推進することに、目的があるのではないだろうかと思われる。エルドアン大統領はつい最近、アゼルバイジャンを訪問し、二国間の経済協力推進を、話し合っている。

 そこまでトルコの経済状態が悪い、ということでもあろう。外貨のトルコへの投資が減少しており、借金経済が動かなくなる、大きな懸念があるためだ。そのためエルドアン大統領が得意としていた、メガ・プロジェクトの推進による、経済活性化はここに来て、大幅に抑えざるを得なくなっている。

 エルドアン大統領はナゴルノカラバフ問題が解決しない限り、アルメニアとの国境を開くことは無いと言っている。冷たい隣人同士の関係を、当分続ける方針のようだ。述べるまでも無く、アルメニアとは異なり、アゼルバイジャンには石油もガスもあるし、ロシア・ガスの通過ルートでもある。

 アゼバイジャンとの関係を強化することは、ロシアとトルコとをガス資源で繋ぐ上で重要であり、中央アジア諸国のエネルギー資源を、トルコに取り込むうえでも、重要なのだ。トルコはロシアや中央アジア諸国の、エネルギー資源のヨーロッパへのハブ国家に、なろうとしているのだ。アルメニアとアゼルバイジャンに横たわる、ナゴルノカラバフ問題に対するトルコの関心は、その辺にあるのであろう。