『シリアをめぐる国際駆け引き』

2018年8月23日

 

 ロシアの支援を受け、シリア政府はほぼISなど、反政府派のテロ組織の壊滅に、成功している。そのシリアに残されている、一大反政府派拠点はイドリブとなった。このイドリブの戦いが、今後の最大テーマとなろう。

 イドリブにはアルカーイダやIS(ISIL)など、反政府各派が集結しているが、それは第三国への移動を前提とする、最後の拠点であり、反政府派の集結場所なのであろう。シリア各地で追い込まれた反政府各派は、アメリカの支援もあり、バスなどでイドリブに、移動させられてきていたのだ。

 イドリブはトルコの国境に近いこともあり、トルコに逃亡して、そこから第三国に移動するということが、比較的容易に出来ていたのだ。最近はトルコ政府が反政府派のテロリストたちによって、トルコ国内でテロ事件を起こされるために、少し反政府派テログループに対する、対応が変わってきてはいる。

 いま準備されているイドリブ最後の戦い()は、シリア政府側が一掃作戦を準備しており、これに対しアルカーイダなどが、応戦するというものだが、相当大規模なものになるのであろう。

 シリア軍は最初に空爆を敢行し、次いで地上戦闘に移る、ということであろうが、空爆の段階では、一般住民の犠牲が、相当大きなものになることが予想され、現段階で既に5万人の難民が、シリアからトルコに向かうだろう、と予測されている。

 トルコ政府は現在いる、シリアからの難民300万人()に加え、新たな難民を受け入れ、世話をしなければならない、ということであり、その費用は相当な額に、上るであろうことが予想される。

 こうしたシリア軍優位の状況を見て、サウジアラビアは焦りが出ているのかもしれない。サウジアラビア政府はシリア政府に対して、シリアからイランの革命防衛隊やヘズブラの戦闘員を追い出せ、と要求しているのだ。

シリアにしてみれば、自国の安全上大きな貢献をしてきた、イランの革命防衛隊やヘズブラを、この段階でシリア政府が追放することなど、あり得ないのだが。これはサウジアラビアの意図であると同時に、アメリカの意図でもあろう。こうしてシリアに圧力を掛けることにより、アメリカはロシアに圧力を掛けるのであろうか。

イランがイラクからシリアへのルートを押さえているが、このこともアメリカにとって不安要因であろう。バグダッドからシリアへのルートが、イランの手中にあるということは、イランからイラク・シリアに弾丸道路が、完成したようなものであり、大規模な軍の移動が可能となろう。

ボルトン米国防顧問が、ロシアはシリアで苦慮している、と言ったことに対し、ロシアは何も困窮していない、と返答しているが、追い込まれるのはアメリカではないか。