いまアメリカとトルコの関係が、悪化のさなかにあるが、その主因はアメリカ人ブロンソン牧師の、釈放をめぐってだ。トルコ側はブロンソン牧師が、反政府のギュレン・グループと関係があり、PKKとも関係があったとしているが、アメリカ側はその関係を、全面的に否定している。
ブロンソン牧師は3年間に渡り、トルコの刑務所に入れられていたが、最近自宅軟禁になった。アメリカは彼を自宅軟禁から、完全な自由な身にしろと言っている。しかし、トルコはそのアメリカの要求を、呑むつもりは無く拒否している。
そこで出てきたトルコ側の新提案は、アメリカで捕まっているトルコ国営の、ハルク・バンク幹部の釈放と、この問題のファイルを閉じることと、ブロンソン牧師の釈放を交換にしようというものだった。
しかし、アメリカ側はブロンソン牧師の釈放に、『彼は無罪なのだから、条件を付けるつもりはなく、取引をするつもりもない。あくまでも条件無しで釈放しろ、さもなくば、再度の制裁を、トルコに対して発動する。』と言っている。
この件に出てきたハルク・バンクは、イランとのマネー・ロンダリングで、大量のドルの密輸と、金の密輸を手がけた銀行だ。アッチラ代表はいまアメリカで逮捕されており、この前下りた彼に対する判決は、32ヶ月の投獄というものだった。
これ以外にも、トルコの前経済大臣や、その他の銀行幹部も、アメリカの司法サイドの査問対象になっている。そして、トルコのハルク・バンクの有罪が固まれば、アメリカはトルコに対して、数十億ドルの罰金を、科するつもりでいる。
もう一つの重大な問題は、このハルク・バンク問題は、エルドアン大統領と直結している、ということであろう。裁判が進展していけば、何処かの段階でエルドアン大統領その人が、裁判の対称になるということだ。
何故ならば、このハルク・バンク・スキャンダルは、トルコの元閣僚が直結した問題であり、その閣僚への指名とマネー・ロンダリングは、エルドアン大統領が首相時代に指揮して、行われていたものだからだ。
もちろん、欠席裁判でエルドアン大統領が有罪になっても、トルコ政府は彼をアメリカ側に引渡しはすまい。ただそうなれば、彼の政治家としての評価は、世界的に大幅に下がることになろうし、アメリカには入国できなくなるし、外国に出た場合、そこで逮捕されることもありうる、ということであろう。
それは、エルドアン大統領が政治家としての生命を、完全に断たれる、という事であろう。