『アラブ湾岸諸国の悩み』

2018年8月19日

 

 アラブ湾岸諸国は石油やガスの、大産出国であることから、世界的にも豊かな国々の代表格だ。しかし、お金持ちは喧嘩せずとは言うものの、これらの国々も多くの問題を抱え込んでいる。例えば、バハレーンの場合、同国の国民の過半数がシーア派であり、国王や政府がスンニー派であることから、政府と国民との対立は久しい。バハレーンでは何十年にも渡って、反政府デモが繰り返されてきているのだ。

 いまその反政府派の代表格である、活動家が逮捕されているが、彼に対する処遇がどうなるのか、注目されている。場合によっては、終身刑や死刑もありうるだけに、状況は緊張している。もし、彼が処刑されるようなことになれば、シーア派国民の反政府活動は、過激なものになりえよう。

 カタールとサウジアラビアとの間では、サウジアラビア政府がカタール国民の、ハッジを許可しないと抗議している。イスラム教徒全員の義務であり権利なのだから、サウジアラビア政府がこれを禁止するのは、どう考えても理屈に合わない。

 サウジアラビアはそのような事実は無い、と言っているが、実際にはそれが起こっているのであろう。それはあくまでも宗教を抜きにした、サウジアラビア政府とカタール政府との、政治的問題が原因となっていよう。

 カタールはアラブ首長連邦との間にも、問題を抱えている。サウジアラビアとカタールとの対立が、先鋭化していくなかで、アラブ首長国連邦はサウジアラビア側に付き、カタールと緊張関係になったのだ。

 アラブ首長国連邦とカタールは、お互いに空の航行の自由が、奪われているとか、テロを送り込まれた、と非難しあっている。それは事実であろう。特にアラブ首長連邦はカタールに向けて、戦闘機を飛ばしている、可能性は高かろう。

 カタールとサウジアラビアが、対立するようになったのは、カタールがイランとの関係を、強化したことにあったろう。カタールにしてみれば、ペルシャ湾海底ガスの開発で、イランとの協力が必要なのだから、関係改善しても仕方あるまい。

 しかし、サウジアラビアにしてみれば、カタールとイランが合意し、抜け駆け的にペルシャ湾海底ガスの、開発を始められたのでは堪るまい。ここにも利益がちらついており、単なる軍事や政治の、問題ではないのだ。

 このような、サウジアラビア・アラブ首長国連邦対イランの軍事緊張のなかで、困っているのはエジプトであろう。エジプトはサウジアラビアの依頼で、大軍をサウジアラビアの王家の、ガードに送り込んでいるが、もし、イランとサウジアラビアが武力衝突するようなことになれば、矢面に立たされるのは、エジプト軍だからだ。

 金は欲しいが命も欲しい、エジプトのシーシ大統領はこの問題を、どう解決していくのか見物だ。