『イスラムの巡礼は命がけエジプト人39人死亡』

2018年8月25日

 

 サウジアラビアの砂漠の中の盆地にある、イスラム教の中心地メッカへの巡礼は、定められた期間に、定められたコースを回ると、ハッジとなることが出来る。ハッジと呼ばれることは、イスラム教徒にとっては、すこぶる名誉なことなのだ。

 イスラム教の聖典コーランには『行けるものは人生に一度はハッジに行け。』という教えがある。従って、世界中のムスリムはハッジのために貯金をし、無理をしてでもハッジに向かうことになる。

 ただ、貯金が貯まってハッジに行けるのは、高齢者の場合が多い。もちろん、サウジアラビアに近いアラブ諸国の場合は、費用も肉体的負担も、他の地域からの巡礼者に比べて、楽であろう。

 しかし、イスラムのカレンダーは毎年ずれていくので、今年のような8月の炎天下では、まさに命がけということになる。サウジアラビア政府はハッジの健康管理に、相当神経を使っているが、やはり犠牲者は出る。

 今年の場合、他の国のことは分からないが、エジプトはハッジにおける死者数を、公表している。825日現在での、エジプト人のハッジ死者は、39人だということだ。他の国からのハッジの死亡者数を合計すると、既に数百人に及んでいるのではないだろうか。 

我々からすれば、そんな悪天候の炎熱地獄での、ハッジに何故無理をして、高齢者たちが向かわなければならないのか、と考えるのだが、それは彼らムスリムの信仰心の強さから、来るのであろう。

 一日5回の礼拝をし、断食を守り、貧者に施しをし、善行を積み、ハッジをすれば天国に入れる、と世界中のムスリムは固く信じているのだ。だから無理してでも、ハッジに向かうということになるのだ。

 数年前には、巡礼者が移動中に将棋倒しとなり、1000人を超える死者が出る、という大惨事が起こった。その犠牲者の多くがイラン人であったことから、この大惨事はその後、サウジアラビアとイランとの、国家間の争いにまで発展している。

 日本の高度な技術がハッジでの、安全管理に一役買っている、というニュースが伝えられている。監視カメラでハッジの移動状況を把握し、サウジアラビア警察が誘導できるように、なっているのであろう。

 ハッジといえば1500年もの、古い時代からの、催しなのだが、今では科学技術がそれを、下支えする時代になっているのであろう。もちろん、医療技術や医薬品の進歩も、ハッジの健康管理に貢献していることであろう。