シリアのイスラエルとの国境に接する場所に、ゴラン高原がある。この場所は1967年に起こった、第三次中東戦争以来イスラエル側が、占領している場所だ。そして、以来、イスラエルとシリアとの間には、和平は成立しておらず、ゴランは占領地という取り扱いになっている。
いまではこのゴラン高原は、イスラエルへの出口として、親イスラエルあるいは欧米寄りの、テロリストたちが活用している。例えば反シリア側のテロリストたちは、負傷するとここからイスラエル領に入り、治療を受けても来ていた。
そしていま、このゴラン高原がシリアで、人道支援活動を行ってきている、といわれるホワイト・ヘルメットの、イスラエルへの出口になっているのだ。ホワイト・ヘルメットは確かに一部では、戦争の被災者たちを救ってもいる。
これまでにアメリカの意向に沿って、偽情報生み出してきていることも、多く知られている。例えばシリア政府が化学兵器を使った、という証言をしているが、それは事実でないことが、ロバート・フィスク記者などの報告で、明らかになっている。
今回のゴラン高原経由のホワイト・ヘルメットの、シリアからの脱出はロシア軍とシリア軍の合同軍によって、彼らが追い込まれ、危険になったからだ。これに先立ち、ゴラン付近に集まるIS(ISIL)などを中心とした、反シリア側のテロリストに対して、アメリカ政府は支援しない、と発表していた。
そうしたなかで、アメリカやイスラエルなどはホワイト・ヘルメットだけは、救おうということだったのであろうか。イスラエル政府はホワイト・ヘルメットのメンバーと家族800人のイスラエル入りを認め、その後、ヨルダンに移送している。
そして、カナダ政府はホワイト・ヘルメットのメンバーと家族の、受け入れを発表し就職の機会さえ用意している、ということのようだ。カナダ政府の発表によればその数は確か250人程度だったと思う。
カナダがホワイト・ヘルメット受け入れに本腰なのは、カナダのNGOがホワイト・ヘルメットの重要なスポンサーであったことによろう。ホワイト・ヘルメットはイスラエルからヨルダンに抜け、そこからカナダやイギリス、ドイツに移動するようだ。
これだけ大規模、国際的ホワイト・ヘルメット受け入れの、動きが起こっているということは、推測するに、ホワイト・ヘルメットはアメリカばかりではなく、ヨーロッパの幾つかの国も関係して、結成されていたということであろう。
そしていま、そのホワイト・ヘルメットの活動は既に、シリアでは必要無くなったということであろう。イスラエルの了承の下に、アメリカとロシアの間で話がついた、ということだ。それはIS(ISIL)がイラクやシリアから、他の国に移動していったパターンと、似ていると思えるのだが、あるいはその前のアルカーイダの場合同様に。このどさくさのなかで、ホワイト・ヘルメットばかりではなく、IS(ISIL)やヌスラの幹部たちも、第三国に脱出するかもしれない。