『エルドアン大統領の課題』

2018年6月26日

 

 624日の大統領選挙の結果は、予想したとおりエルドアン大統領の、勝利に終わった。あえてこの結果に一言コメントするならば、選挙結果は投票以前に出ていた、ということだ。それ以上はコメントしても、いまの段階では意味が無かろう。

 さてエルドアン大統領は、これから最短で6年、あるいは8年間大統領の座に留まりそうだ。もちろん、そうするためには健康管理が、最大のポイントであり、病気は最大の敵であろう。

トルコ社会の締め付けが緩んで行き、多くの投獄者が自宅に戻れ、職場に復帰できることを願いたいし、同時にトルコ経済が改善して行き、国民の生活が安定していくことを祈りたい。

 さて長期政権となったエルドアン大統領は、議会民主制ではなく、大統領制に変わったなかで、権限を振るっていくことになる。内閣の閣僚指名、裁判官の指名など、多くの重要な決定が、彼自身で出来るようになったのだ。

 そうしたなかで、エルドアン大統領はアメリカ、ロシア、EU,シリアなどとの関係を、どううまく操縦していくかが、問われている。

 アメリカとの関係では、シリアのクルド対応問題に加え、ギュレン氏のアメリカからの追放と、引渡し交渉の問題がある。そうしたこと全てを含め、アメリカとの良好な関係を、構築しなければなるまい。

 ロシアとの関係では、シリア問題を協議し、解決して行かなければならないし、S400ミサイルの取引もある、露土関係は相対的には、大幅に改善している。そこで問題になるのは、トルコがロシア・アメリカとの関係を、どう維持していけるかだ。場合によってはいずれかを、失う可能性があろう。

 シリアとの関係では、声高に叫んできた、アサド体制打倒は引き下げ、ロシアとの関係で新たなトルコ・シリア関係を、作っていくことになろう。350万人とも500万人とも言われるシリア難民を、どうするかということも、今後の課題であろう。

 EUとの関係では、トルコの非常事態を止める問題がある。エルドアン大統領は選挙後に、非常事態を終わらせると言っていたが、与党AKPのなかにも、連立のMHP党のなかにも、まだ非常事態は必要だという声がある。

 EUとトルコとの関係では、EUはトルコに難民のEU入りを、抑えてほしいという要望があるが、その問題をどう調整するかだろう。

 国際的にはトルコが世界のムスリムの、リーダー国になっていくこと、そして、エルドアン大統領が世界のムスリムをリードする、大統領になっていこうという大野望であろう。