『トルコのインテリ青年が語るトルコの将来』
久しぶりにトルコの青年に会った。彼は高校を卒業して、日本に留学したのだが、その事で言わば少年時代から、私の知っている1人だった。今では日本国籍を取り、大手の商社の社員になっている。
以前は中央アジアのある国に、駐在員として勤めていたが、いまは日本国内で研修を受け、再度、外国勤務する予定になっている。彼と夕食をし、喫茶店で話し合うことにした。
もちろん、テーマは6月24日の大統領選挙であり、選挙予想をしたり、庶民の生活の話をした。次いで移ったテーマは、選挙後のトルコのことだった。選挙後にたとえば野党の候補者、例えばCHPのインジ氏が大統領に選ばれたとしたら、どうなるかということを話した。
彼はそうなる可能性は低いが、もしそうなってもトルコの将来は、明るくないだろう、トルコが発展することが望めるのは、10年後20年後ですよ、と言ったのだ。彼に言わせるとエルドアン政権下で、ギュレン・グループのメンバーの公務員教員などが、職場を追われたために、経済はめちゃくちゃになり、復興は容易ではないというのだ。
確かにそうだろう、現在のトルコの経済状態は、破滅的な状態にあるのだ。それを立て直すには、数年はかかるだろう。しかも、それはパージされた公務員たちが、職場に復帰し、国民が皆で国家を立て直す、という気持ちになればの話だ。
トルコ国家そのものはどうなると思うかと聞くと、彼は多分分割されるでしょうと語った。トルコ東部はクルドの国家になり、西部はヨーロッパの影響下になるだろうというのだ。その理由がきわめて明快であり、自分が考えていたことではなかったので、興味深く聞くことにした。
友人曰く、ヨーロッパ諸国はシリアやイラク、アフガニスタンなどからの難民が増え、大問題になっているというのだ。その問題を解決するには、ヨーロッパに難民が入って来ないように、バッファー・ゾーンが必要というのだ。
難民のヨーロッパ入りを止める壁として、これまでトルコが果たして来た役割は、大きなものがあったが、もし、クルド国家が出来れば、壁は二重になるので、ヨーロッパに向かう難民の数は、激減するだろうというのだ。
ヨーロッパ人のトルコ人嫌いや、経済問題ではなく、ヨーロッパがトルコを分割しようと考えるのは、難民問題を解決するためですよ。それ以外のトルコを嫌う問題は、難民問題に比べれば、それほど重要ではありません、というのだ。
そして彼は付け加えて、トルコの現政権が語る、ヨーロッパやアメリカとの問題解決の話は、皆嘘だと思ったほうがいいです。特に今の時期は選挙がありますからね。嘘も大声で言うと、本当のように聞こえるんです、ということだった。
確かにそうかもしれない。野党の大統領候補も大声で、外国の悪口を言い、現政権批判をしている。大衆はそのガナリ立てる演説を、長い間エルドアンから聞いてきているために、オパンチの効かない演説では、集会参加者を集められないのだ。
『トルコ国民は悪口や脅しがニコチンみたいに、体のなかで中毒になっているんですよ。』と彼は語った。そうかもしれない。