イランの最高指導者ハメネイ師が、『国際合意は無視していい。』と発言した。この発言は水曜日に行われた、イランの国会議員との会合で語ったものであり、それなりの重みのあるものであろう。何故彼はこんな発言をしたのであろうか。
ハメネイ師が語った国際合意を無視していい、という内容の指すところは、レバノンのヘズブラや、パレスチナのハマースをテロ組織と見なす、という合意に関してだった。彼に言わせれば、この二つの組織はテロ組織ではなく、抵抗運動組織ということになる。
もう一つは北朝鮮に対する、資金の流れを止める、国際合意にイランが違反している、という問題だった。これもハメネイ師は無視していい、と発言しているのだ。自国が資金の流れを止める、国際合意の対象国であり、同じような窮地に立たされている、北朝鮮を支持するのは、当然だというのが、ハメネイ師の認識なのであろう。
ハメネイ師がこうした発言をした、そもそもの理由は、アメリカがイランとの間に交わした、核合意から抜けることにしたためであろう。アメリカが国際的な合意を無視するのであれば、イランも自国の都合で、国際合意から抜けて何が悪いのか、という論法であろうと思われる。
このイランとアメリカの核に関する合意については、ロシア、中国、フランス、イギリス、ドイツが、未だに合意に留まっており、アメリカとは異なるスタンスを採っている。しかし、アメリカはこうした国々の、イランとの商取引に制裁を加え、実質、イランとの貿易、経済活動が出来ない環境を、作っているのだ。
フランスの企業はイランで組み立て工場を、多数持っていたが、それも止めなければならなくなったし、石油やガス部門でも同様に、問題が起こっており、フランスのルノ-社やTOTAL社はイランとの関係を、絶たなければならなくなっている。
こうしてみると、アメリリカのトランプ大統領の乱暴な決定が、他の国にも波及し、他の国々も自国に都合のいい合意は守るものの、不都合なものは抜ける、ということになろう。アメリカが勝手に離脱した、TPPなどもその一つであったろうから、日本もこの問題については関連しているのだ。
こうした状況は、今後国際合意なるものが、意味を成さなくなっていく、ということであり、国際的な合意が生まれないか、無視されるということは、ますます世界が混乱していく、ということであろう。アメリカはその先鞭をつけたわけであり、ハメネイ師の発言を非難する資格はあるまい。