トルコの反政府派が言うところによれば、トルコ軍が進めようとしている、イラクのカンデル山にあるPKK基地への攻撃も、アメリカと交渉してきたシリアのマンビジュ問題も、全てが選挙用のエルドアン大統領の、カードだということになる。
確かに、イラクのカンデル山のクルド人組織PKKの、基地への攻撃は容易であろう。空爆すればいいだけのことであろう。もちろん、形式的には陸軍も投入しようが、激戦に至るようなことはあるまい。
PKKも長い間トルコ政府と戦ってきているだけに、引きどころを心得ているため、白兵戦ということには、ならないだろうという判断だ。彼らPKKは、トルコ軍側が攻撃したら引けばいいし、空爆が行われたら各地に散らばるか、地下に潜ればいいのだ。
アメリカとの間で,大分長い間交渉してきた、シリアのマンビジュ問題は、ここがトルコ国境に近いということと、そこでアメリカ軍と協力して戦っている、クルドのYPGを中心とするSDFであることから、将来のトルコへの脅威と、エルドアン大統領は国民に、訴えてきていた。
エルドアン大統領はアメリカ側に対して、YPG(SDF)を攻撃する予定でいるので、アメリカ軍はマンビジュから撤退するように、と伝えてきていたが、アメリカ軍はマンビジュから撤退する意思の無いことを、トルコ側に伝えていた。
今回、トルコとアメリカとの間では、マンビジュをめぐる合意が、交わされたと言われている。その合意とは、アメリカがYPG(SDF)の戦闘員に、与えていた武器を回収し、彼らをマンビジュから追放することだった。
どうやら、アメリカは新たなトルコ側の条件を、受け入れたようであり、その結果、アメリカ軍はYPG(SDF)をマンビジュから追放し、彼らから武器を没収することを、約束したようだ。これに対してトルコ側は、アメリカ軍がマンビジュに留まることを、認めたようだ。
しかし、それはエルドアンン大統領の選挙に向けた合意ではないのか。イラクのカンデル山にある、PKKの基地を攻撃することは、35年以上もの間、トルコ国民が苦しんできた問題であるため、トルコ国民から歓迎されようし、その表面的な戦果は、容易に上がるものと思われる。
マンビジュ問題に関するトルコとアメリカの合意は、どこまでアメリカが約束を履行するのか疑問だ。アメリカはエルドアン大統領の選挙に向けた立場を擁護することで、結果は、あいまいなものにする気ではなかろうか。
それは、アメリカ軍が今後もシリアに駐留し続け、しかも、63000人の傭兵を集めると言っているからだ。そんな状況下で、アメリカが容易にクルドのYPG(SDF)を解体し、しかも武器を取り上げるとは考え難い。今回のトルコ政府が発表した、二つの作戦は野党が指摘しているように、結果的に選挙時だけの、空鉄砲に終わるのではないのか。