大国の意向が特定の国を、望まない相手との戦争状態に、追い込むことがある。日本と中国との関係や、北朝鮮との関係は、日本政府の意向とは違う力が働いて、敵対関係を作っているのではないのか。
中国共産党が国府軍に勝利したのには、日本軍の武器が大いに貢献した、と言われているし、北朝鮮にとっては日本があこがれの、国だったのではないのか。歴史のなかでは多くのことが掘り起こされ、同時に多くの事実が隠蔽されてしまう。
中東の地域でも同じようなことが、起こっているような気がしてきた。イスラエルとシリアは犬猿の仲であり、長期に渡って敵対関係にある、とされてきている。しかし、それは事実だろうか。シリア国民も大統領も、決して無謀な戦争を、するような民族ではない。故アサド大統領も彼の子息バッシャール・アサド大統領も、極めて現実的な判断をする人達だ。
アサド大統領がイスラエルとの戦争を望まないのは、やれば負けることが明白だからだ。だから冷たい関係が長期間に渡って続きながらも、シリアはイスラエルに対して、戦争を仕掛けることは無かった。
最近になって、そのシリアとイスラエルとの緊張関係が、高まっていると報じられているが、それはシリアとイスラエルとの緊張なのか、あるいは他の国とイスラエルとの間の緊張が、シリアを舞台にして展開されているのか、ということだ。
その他の国とはイランでありアメリカではないのか。イランはシリアのゴラン高原の近くに陣取り、レバノンのヘズブラを使いながら、イスラエルとの緊張を高めている。例え戦争が起こっても、イラン本土が被害を受けることは無いか、極めて限られたもので終わろう。
アメリカはシリアの北部に、ペルシャ湾からのガスを運ぶための、パイプ・ラインを引くことと、シリアの石油ガスを支配するために軍を送り、『イスラエルが危険だ』と事実を隠して嘘の緊張を、作り出しているのではないのか。
そうしたことがあるためであろうか、緊張の度が高まるゴラン高原地域を眺めながら、イスラエルのネタニヤフ首相は遂に本音を、吐き始めているようだ。『イスラエルとシリアとの国境にはイラン軍ではなく、シリア軍にいて欲しい。』と思い始めているのだ。
ネタニヤフ首相の目には、イラン軍は危険であるが、シリア軍は常識をわきまえている、ということであろう。シリアとにらみ合っている分には、イスラエルは戦争を始める必要が、無いということだ。
イスラエルにとってはシリアとの仮想の戦争危機は、国内対策と世界からの支援を受けるために、必要なものであろうし、シリアのアサド大統領にしてみれば、国内反政府勢力を抑える、格好の口実になっていよう。
つまり、イスラエルとシリアは互いにののしりあいながら、その事によって国内が治まっている、ということであり、隠れた盟友同士、ということではないのか。『外国はシリアから手を引け。』とロシアが言い出したのはこうした事実を、充分わきまえているから、出た言葉であろう。