『IMFという高利貸しに苦しめられるエジプト庶民』

2018年6月17日

 

 いまエジプトでは軒並みに、公共料金が値上されている。地下鉄の料金が1エジプト・ポンドから7エジプト・ポンドに値上げされ、勤め人の一日の往復の交通費は、2エジプト・ポンドから14エジプト・ポンドに引き上げられたのだ。

 これは大変な負担であろう。これまでタバコを吸っていた人は吸えなくなり、安いランチも食べられなくなる、ということだ。それはエジプト人の各家の家計にも、直接影響を与えもしよう。

 続いて電力料金が値上され、そして水道料金も値上された。まさに水の料金の値上は命がかかっているということであろう。加えて、燃料代ガソリン代も値上された。これは地方で生産される農産物、食料品の移送にかかる移送費用が、増えるということであり、国内産品の値上につながる。

 先月エジプトを訪問した折に、警察幹部と食事を共にしたのだが、公共料金の値上が話題に上った。そこで私は一時期我慢をして、経済の回復を考えなければならない、といったようなシャレたことを言った。それに対して警察幹部は、庶民の生活は相当苦しくなっているんだぞ、と強い口調で反論した。

 何故このような無謀なことが、いまのエジプトで起こるのであろうか。それは国家財政が赤字であるために、IMFから金を借りたことによる。IMFはエジプト庶民の窮状など知りもせず、考えず、国家財政の赤字を減らすためには、政府の補助金を減らせと迫る。

 政府の補助金が向けられているのは、パンの価格であり、食用油の価格であり、砂糖の価格であり、お茶の価格だ。これらはエジプト人の最低限の生活というか、命を繋ぐものなのだ。

 しかし、政府はIMFの指導を受けざるを得ない立場に、追い込まれている。なにやら『ベニスの商人』を思わせるではないか。以前、例えばサダト大統領やムバーラク大統領の時代には、湾岸諸国なかでもサウジアラビアとの、良好な関係があったことから、資金的に苦しくなると、彼らはサウジアラビアなど湾岸諸国に出向き、金の無心をしていたものだ。 

そして石油価格が高かったこともあり、そのカネの無心は簡単に、受け入れられていた。しかし、今では石油価格が下がり、アメリカの武器の押し売りもあり、湾岸産油諸国の台所事情も、相当苦しくなってきている。そうなると、エジプトのシーシ大統領が湾岸諸国に出向いても、なかなか資金援助へのいい返事は、してくれないのだ。

 諸物価の値上がり、公共料金の値上は、最終的には大規模デモを生み、その後には暴動が発生し、次いで軍がクーデターを起こす、というステップを踏むのではないか。軍出身の大統領が続いてきたエジプトで、軍によるクーデターが起こるのだろうか。

 大分前の話しだが,ある日銀のOBは中央アジア諸国政府に対して、IMFからの資金借り入れはするな国を潰す、と警告して回ったようだ。その同じ警告を、いまこそアラブ諸国に、向けるべきではないのか。