最近になって、国際関係でのデマ情報が、大分増えているような気がする。A国とB国があることで合意したというたぐいの情報なのだが、それは調べてみると何ら合意されていないことがすぐわかる。
そのことは、A国あるいはB国にとってその偽情報は、重要な意味を持つということであろうか。その情報の発信源(二国あるいは一組織と一国)のいずれかが、デマ情報を流し自国に都合のいい状況を、作り出すということだ。
例えば次の様な話がある。ガザのハマースはイスラエルとの間で、停戦が合意されたと発表した。これに対してイスラエル側は、何の合意も生まれていない、と全面的に停戦合意を否定している。
この場合は、多分にハマース側が作った、デマ情報と思われる。イスラエルとの戦闘で、多くの犠牲者を出したガザのハマースは、ガザ内部のパレスチナ人の間に、不満を募らせ、反発するメンバーが増えてきているからだ。もちろん、ハマースのメンバーではない、一般人の場合にはもっと強い反発が、生まれているのであろう。
ハマース側はこのデマ情報を流すことにより、その後に発生するイスラエル側からの攻撃は、イスラエルによる停戦違反だとして世界に宣伝し、ガザ住民の怒りをハマースではなく、イスラエル側に向けようとしているのではないか。
トルコとアメリカとの場合にも、似たようなデマ情報が、流されている。トルコはシリアのマンビジュ対応で、アメリカとの間に合意が生まれた、と言っているが、アメリカ側はこれを全面的に否定している。
その後に、トルコはマンビジュからクルドのYPGが、撤退するといった情報も流しているが、それも嘘であろう。アメリカはあくまでもクルドのミリシアを利用して、マンビジュなどシリア北部を支配したい、と考えているからだ。
この場合もやはり、トルコ側のデマ情報と思われるのだが、ハマースの場合と同様に、トルコが厳しい状況に追い込まれたために、口に出したデマ情報であろう。トルコはいま多くの国内問題を抱え込んでいるのだ。経済的には厳しくなり、インフレ、トルコ・リラの暴落、失業問題などが、国民の生活を追い詰めている。欧米との関係は劣悪な状態にあり、トルコのそうした経済苦の状態を支援する国は、一国も無いというのが実情だ。
しかし、この手のばれやすいデマを流すことは、結果として国民の政府に対する信頼を,損ねることになろう。トルコはこのアメリカとの合意というデマが、少しでも6月24日に行われる大統領選挙で、エルドアン大統領に有利に働く、と考えたのであろうか。
デマ情報はどこでも飛んでいる。つい最近では、反プーチンのロシア人ジャーナリストが暗殺されたという情報も、間もなく彼が生存していることが、明らかになっているし、イギリスで起こったダブル・スパイ親子の暗殺も,ロシアだと決め付けられたが、これも世界中で嘘であることがほぼ一致した、認識に変わっている。
シリアのガス兵器使用も同じだ。シリアはガス兵器など使っていないのだが、無理やり使ったことにされ、アメリカの攻撃を受けている。攻撃を受ける側はたまったものではないが、攻撃を加える側は嘘でも、口実が出来れば攻撃し,世界にその攻撃の正当性を叫べるのだ。目を開いて情報を読もう。そうでなければ日本国内で起こる嘘にも、そのうち気づく能力が無くなってしまおう。その先に待っているのは悲惨な状況であろう。