ロシアが製造したS400ミサイルに対する、国際的な関心は高まっている。1発で100以上の対象物を撃墜できる、というのだから高い評価が生まれても、不思議はあるまい。
中東で最初にS400ミサイルに、トルコが関心を示し、次いでイランやサウジアラビアも、輸入を希望するようになってきている。その事はアメリカにとっては、大きな痛手となろう。アメリカはトルコのS400輸入に、圧力を掛け何とか阻止したい、と考えているようだ。その事をロシアのプーチン大統領は指摘し、アメリカを非難している。
もし、問題なくトルコが、S400の輸入が出来、次いでイランが輸入出来るようになれば、イランと対抗するサウジアラビアも、輸入を強く望むことになろう。そうなれば、中東諸国のなかの親米諸国に対する、アメリカ製兵器の輸出は大きなダメージを、受けることになろう。
S400ミサイルだけではなく、ロシア製の潜水艦や戦闘機、レーダーに対する、国際的な評価も高まっている。現実にロシアとトルコとの間では、戦闘機の輸入交渉が、始まっているようだ。そうなれば、アメリカが非難する『トルコのロシア製兵器の輸入は、NATOの戦略システムを破壊する。』という非難は通り難くなろう。
シリアのアサド体制を打倒すると言い続けてきた、アメリカはロシアの正式なシリア政府からの要請による駐留で、大きな成果を上げることが出来たために、アサド体制を打倒できる状況にはなくなった。
その事の与えたロシアに対する評価は、今後、大きな影響を中東地域各国に、及ぼすものと思われる。『ロシアは確実に守ってくれる。』というイメージが拡大しているのだ。その流れのなかでは、シリアの旧宗主国であるフランスも、アメリカに対して玉虫色の対応を、採るようになってきている。
アメリカのEUに送った尖兵という役割の、イギリスは結果的にEUから離脱し、何の影響力も持てなくなっている。EUが考える独自の外交などの潰し役としてのイギリスの力に、アメリカは期待出来なくなっているのだ。
そしていまでは、ドイツとフランスがアメリカとは異なる、独自のロシアとの関係改善を、進める方向にある。ロシアとイランとの関係は極めて良好だが、アメリカがヨーロッパ諸国に対して、イラン制裁を求めても、ヨーロッパ諸国は言うことを聞かなく、なってきている。
イランの持つ市場としての価値は大きく、イランのエネルギー資源の存在も、無視できないのだ。フランスはエアバスだけではなく、イランに対して兵器も、売り込むつもりでいよう。
ロシアの兵器輸出が伸び、フランスやイギリス、ドイツもそれに続けば、アメリカ製兵器の中東諸国への輸出高は、おのずと縮小する、ということになろう。
こうしたことからアメリカはまず、トルコのロシア接近とS400輸入に異常なまでの関心を払い,何とかキャンセルさせたい、と願っているのであろう。