『拡散と特攻を繰り返すIS』

2018年5月25日

 

 IS(ISIL)がイラク・シリアを追われ、周辺諸国へ拡散していっていることは、何度か報告した通りだ。それでもしぶとく、イラクやシリアでも活動を、継続しているようで、時折、イラクのバグダッドで、IS(ISIL)が特攻テロを行ったとか、シリアのダマスカス近郊では依然として、抵抗を続けている、といった情報が伝わってくる。

 バグダッドで起こったテロは、つい524日のことであり、映画のタイトルと同じ、バグダッド・カフェが爆弾テロに会い、5人が死亡するという内容だった。シリアでも首都ダマスカスの南では、シリア軍とIS(ISIL)との戦闘が続いており、IS(ISIL)はシリア軍によって、間もなく完全に掃討される見込みだ。

 このため、ロシアとシリア両国政府は、戦後の復興を話し合う段階に入っており、シリア国内各派との政治交渉をするよう、ロシア政府はシリア政府に、働きかけている。それが成功すれば、シリアのアサド体制は強化され、外国が体制を破壊することは、困難になろう。

 さて、そうしたなかでIS(ISIL)は今後、どうするのかというと、一部では支配地域をヌスラ(アルカーイダ系組織)に引き渡す形で、影響力を残そうという試みも見られる。どうせIS(ISIL)はアルカーイダと同根であり、何の問題もないということであろうか。

 マスクを変えて交互に活動していれば、IS(ISIL)は敵側に対して安心させ、再度の攻撃チャンスを持てる、ということであろうか。それはアメリカの作戦でもあろうと思われる。アメリカは強硬に押し、次いで緩め、また強硬な攻勢をかける、という方式を北朝鮮でも、イランでも用いている。

 しかし、アメリカのそうした作戦は既に、トランプ大統領の手の内がばれており、成功するとは限らない。今回の北朝鮮のキム首領とトランプ大統領との、会談が延期されたことも、北朝鮮にとっては何の痛痒もなかろう。

 イランでもアメリカの強硬な圧力は、何の効果も生み出すまい。ハメネイ師『アメリカの陰謀は、すべて失敗するだろう。』、と予測しているが、そうなるのではないか。アメリカの作戦が極めて単純に、なってきているからだ。

 IS(ISIL)はその雑なアメリカの戦略に沿って、行動しているわけであり、アメリカの弱さはIS(ISIL)にも及んできてい、ということであろう。リビアではその後、IS(ISIL)の大きな躍進は見られないし、アフガンでもしかりだ。中央アジア諸国でも、IS(ISIL)による、テロが試みられているが、体制に大きなダメージを与えるものには、至っていないようだ。

 やはりIS(ISIL)は終わりの時を、迎えているのではないのか。そして、それはアメリカ自身の終わりも、意味しているように思えてならない。ヨーロッパ諸国なかでもドイツ・フランスは、既にアメリカ離れをしているのではないか。その原因の一つはヨーロッパでのIS(ISIL)の動きでもあろう。