トルコには正式な軍隊の他に、SADATという名の軍事組織が存在する。これはイスラム諸国と協力して、軍事作戦を行うことと、エルドアン体制を守ることに、目的がある。従って、このSADATなる組織はイランのIRGC(革命防衛隊)に、きわめて類似した組織であろう。
IRGCはその役割を、ハメネイ体制の防御とイスラム諸国への支援、国家体制の防衛に重点を置いている。つまり、極めて政治色の強い、軍隊ということだ。その活動の結果、いまではイランがレバノンを、コントロールするようになったし、イラクやシリア、イエメンも、このイランのIRGCの強い影響下にある。
イランのIRGC同様に、トルコ政府が結成したSADAT組織は、シリアの反体制組織であるFSA(自由シリア軍)にも、タンリベルデイを先頭に大きな影響力を、及ぼすに至っている。
SADATというトルコの軍事組織は、北キプロス人の元軍人、タンリベルデイによって組織された、と言われており、彼はエルドアン大統領と、極めて近い関係にあるということだ。タンリベルデイは2012年に、この組織を立ち上げているが、いまではトルコの防衛産業のイスラム諸国間協力や、防衛協力を進めている。
(彼のファミリー・ネームはアドナンであることを見ると、あるいは先祖はトルコ人かと思われる。彼の出身地が北キプロスであり、北キプロスはトルコ系キプロス人の、支配地域であることを考えると、十分ありうることだ。)
彼は2016年には、エルドアン大統領の軍事最高顧問に、任命されている。そして、彼がシリアの反体制組織FSA(自由シリア軍)を、育成したと言われている。このシリアのFSAはトルコの支援無しには、存在しえない組織なのだ。
また、アメリカが支援するシリアのSDFとの、秘密コンタクトはタンリベルデイが、進めたものだが、それはトルコの最高機密であり、エルドアン大統領の許可の下に進められたということだ。トルコがいままでアルカーイダの手先である、ヌスラを支援してきたことも、公然の秘密だ。
また、タンリベルデイはイスラエルを敵視しており、イスラエルをネオ・クルセーダーズ(新十字軍)とみなしており、その考えからこれまで、パレスチナの軍事組織を支援してもいる。
また学術的活動をヨルダン川西岸地区で行っていた、トルコ人のジェミル・テケルはハマースと関係しているとして、イスラエルによってヨルダン川西岸地区から、追放されているが、彼はタンリベルデイと、極めて近い距離にいる人物だ。
トルコのエルドアン大統領は、ネオ・オスマン帝国を構想している人物であり、あるいはこのSADATなる組織は、その構想を現実化するために、創られたのかもしれない。