『ギュルの大統領立候補は消えるか』

2018年4月28日

 元大統領だったギュル氏は、彼のスマイルと柔らかな演説で、トルコ人を魅了するばかりではなく、欧米人も魅了してきていた。彼は国際機関での仕事の経験もあり、考え方が欧米に近い、ということもあるのであろう。

 そうしたことから、今回のトルコ大統領選挙で、彼を担ぎ出すことにより、エルドアン大統領を失脚させよう、という試みがあった。しかし、野党のなかにはいろいろ異なる意見があり、未だに統一候補としてギュル氏を立てることに、合意できないでいる。

 彼を推すだろうと思われている政党は、野党第一党のCHP,そしてSP,IYIなどだ。ただし、IYIのアクシェネル女史は大統領選挙に立候補する、と言っており彼女が選挙候補者から降りて、ギュル氏を推すとは思えない状態にある。CHP内部ではギュル氏を推薦することに、抵抗を示しているメンバーが少なくない。

 こうしたギュル氏に対する支持の弱さは、彼の穏健な姿勢から来ているのかもしれない。彼が大統領の時期には、大統領よりも首相であったエルドアン氏の、強いキャラクターが国民を魅了していた、という事実がある。

 従って、ギュル氏が大統領に当選しても、何も変わらないだろう、という推測をする人達も少なくないようだ。トルコ人は強いキャラクターのリーダーを好み、彼が自分たちを強引にまで、リードしてくれることを望む傾向があるからだ。それは、オスマン帝国の歴史から、来ているのかもしれない。

 現状では、エルドアン候補に並び、IYIの党首であるアクシェネル女史、HDPのデミルタシュ氏が候補者として名を連ねている。そこに、どうギュル氏が加わってくるのか来ないのかが、いま話題になっている。

 与党AKPの首相ユルドルム氏は『ギュル氏はAKP設立当初からのメンバーなのだから、AKPから立つべきだ。』と語っている。加えて『ギュル氏は我々の友人だから、彼が望むどのようなポストでも、用意しよう。』とも語っている。

 つまり、『大統領に立候補しない限り、どんなポストでも与えてやるから、立候補は降りろ。』と言っているのだ。ギュル氏もエルドアン大統領が首相の時代、汚職に手を染めていた可能性があろう。そうなると、冷静なトルコ国民からは、あまり支持されないかもしれない。例え支持され大統領になったとしても、以前と同様に強力な政治指導力は、発揮できない可能性があろう。