『アメリカはシリアから撤退するのか』

2018年4月25日

 

 アメリカのトランプ大統領は、シリアから早急に撤退したい、と何度と無く言っている。しかし、それに反対する動きは、アメリカ国内には少なくない。シリア撤退に反対する人たちに言わせれば『膨大な軍事費を費やしてシリアに駐留し、IS(ISIL)の掃討をしていたのに、いま引き上げたのではIS(ISIL)が再度復活してしまい、派兵の成果が消えてしまう。』と語り『アメリカ軍がいま引いたのでは、何の経済的なメリットも手にすることが出来ない。』と不満を述べている。

 確かにそうであろう、現在アメリカ軍が駐留しているのは、マンビジュでありそのすぐそばには、エルズールの油田があるのだ。アメリカにとってはそこを手放すことは、大きな損失であり、しかも、北シリアから撤退してしまえば、当初のシリアへの軍派遣の目的であった、イラク・シリア経由のペルシャ湾海底ガスの輸送は、不可能になる確率が高いのだ。

 トランプ大統領に言わせれば、クルドの軍事組織SDFに、大量の武器を無償で援助して、アメリカ軍の代役をやらせるから、大丈夫だということであろう。しかし、アメリカ軍が抜けた後のSDFの実力は、それほどではなかろう。あくまでもバックにアメリカ軍がいるために、SDFは軍事力をいかんなく発揮できていたものと思われる

 ロシアはアメリカ軍のシリアからの撤退をせせら笑ってる。ロシアはアメリカ軍のシリアからの撤退はあり得ない、と予測しているのだ。同じ様にイランも、アメリカ軍のシリアからの撤退は、あり得ないと判断している。

 アメリカ軍がシリアから撤退することが、これほど信じられない理由は、アメリカの経済的メリットや、軍事的成果の維持だけではない。実はアメリカ軍がシリア国内に留まることは、イスラエルの安全に大きく寄与しているのだ。

 イランがシリアのアサド体制を支持し、軍を派兵しているが、シリアのイスラエルとの国境に、彼らは陣取っているのだ。加えて、レバノンのヘズブラもシリアとイスラエルの国境にある、ゴラン高原のそばに陣取っているのだ。

 トランプ大統領はアメリカ大使館を、テルアビブからエルサレムに移転し、全面的にイスラエルを擁護するように見えるのだが、今後もそうするのであれば、シリアからアメリカ軍を撤退させるわけにはいくまい。アメリカの利益を最優先するトランプ大統領が、もしシリアから軍を引くことになれば、それは大きな対イスラエル政策の変更を意味しよう。

 確かに、トランプ大統領はネタニヤフ首相の対ヨルダン川西岸での、入植に腹を立ててもいる。彼はネタニヤフ首相に対して、和平をやる気があるのかと迫っている。そうしたトランプ外交の大転換は、間もなく見えてこよう。