『英米仏の攻撃で立場が有利になったアサド大統領』

2018年4月19日

 

 アメリカ・イギリス・フランスの3国によるシリア攻撃が、4月13日(アメリカ時間)に行われた。いみじくもこの日は金曜日、魔の13日の金曜日という仕掛けだ。アメリカやヨーロッパはこうした日を選ぶのが、好きなのであろうか。

 トランプ大統領はミッション・コンプリートと高らかに、勝利宣言をしたのだが、世間の見方はどうも違うようだ。まず、アメリカやイギリス・フランスの攻撃には、正当性がなかったと言われ出したことだ。シリアは化学兵器を使ってシリア国民を、攻撃はしていなかったのだ。

 それは当然であろう。シリアの国内状況はISなどの掃討にほぼ成功し、再建に向かうところだったのだ。そのアサド大統領が化学兵器を使って、国民を殺害する必要は、全く無かったのだ。再建時には、国国民が一体となることが必要であり、国民の体制に対する支持が、最も重要なのだ。

 アメリカやイギリス・フランスはあくまでも、シリアが化学兵器を使ったとして、非人道的なアサドを許すわけにはいかない、と言って攻撃を加えたのだ。しかも、国際化学兵器査察チームが入る、ほんの少し前にそれをさせずに、攻撃を加えたのだ。

 その事実はシリア人の間では、広く知られていよう。このアメリカやイギリス、フランスのデマの証拠となった証言をした、いたいけない少女は、今後どうなるのであろうか。彼女は一生懸命に化学兵器が使われた、と証言していたのだ。シリア人の間では、アメリカの手先になった少女、ということになろうし、彼女の父親は国を裏切ったとして、殺されるかもしれないのだ。

 一方、このアメリカ・イギリス・フランスの攻撃が、相当手控えられたものであったために、被害は少なく数人が負傷し、建物の幾つかが破壊されただけだった。シリア軍が迎撃したミサイルで、アメリカ・イギリス・フランスが放った105発のミサイルは、71発が撃墜された、とも報じられている。

 これではアサド大統領が勝利した、と言われても仕方あるまい。また、イランやロシアとの関係も、このことで強化されたものと思われる。シリアは国防力を強化したということを、ロシアやイランに対しても、主張できるようになったのだ。加えて、ロシアは同国の武器が高性能であることを、世界に宣伝することに成功した。

 シリア軍を支えてきたイランもしかりであり、イランの支援を受けることが、どれだけ心強いかが周辺諸国にも、伝わったものと思われるし、イランと対峙するサウジアラビアは、肝を冷やしていることであろう。

 今回のアメリカ・イギリス・フランスのシリア攻撃後、イスラエルは新たな不安を抱えることとなった。アメリカは今後少なくとも当分の間は、シリアを攻撃することはあるまい。そのことからイスラエルを、放置するのではないということだ。

 アメリカはイラン攻撃を思いとどまったのではないか、イランはハマース支援を強化するのではないか、といった不安からだ。そして、シリアの軍事力が強化されたことは、イスラエルとの武力衝突を産む可能性を高めたし、シリア国内でのイラン軍の活動も、活発になるということだ。