『思惑外れたエルドアン・ロウハーニが非難』

2018年4月 9日

 

このニュースはあれっと思って読んだのだが、どうやら本当のようだ。情報源はイスラエルのDEBKAだから、案外信用していいのではないか、と思われる。これまでトルコ・ロシア・イランは、シリア対応で緩い協力関係にあった。

 しかし、トルコのアンカラで開催された、トルコ・ロシア・イランの大統領会議で、意見の相違が出てきたというのだ。イランのロウハーニ大統領がトルコのエルドアン大統領に対して、『シリアのアフリンから手を引け。』と言い出したということだ。

 イランもシリアに軍を駐留させているのだが、イランの方はシリア政府の要請によるものであり、正式な駐留ということになる。ロシアもしかりであり、シリアのアサド大統領の要請に沿った駐留なのだ。

 しかし、トルコ軍のシリア侵攻はあくまでも、トルコ政府の独自の決定によるものであり、シリア政府の要請に沿ったものではない。つまり、ロシアとイランの軍は友軍としてシリアに駐留しているのだが。トルコ軍はシリアに侵攻した違法な敵の軍隊、ということになるのだ。

 何故こうしたことが起こったのであろうか。それは単純に言えば、シリアをめぐって中東の大国であるトルコとイランが、覇権争いを始めた、ということであろう。トルコはオスマン帝国の時代を思い起こし、ネオ・オスマン帝国を言い出している。方やイランはペルシャ帝国の幻想に、よるものであろうか。

 トルコはとりあえず、シリアの北部を支配し、併合することを考えているのであろうが、イランの方はシリアを抱き込んでしまえば、イラン・イラク・シリアそしてレバノン、と続く道路を建設し、イランから直接物資や軍を、地中海沿岸まで輸送できるようになることを、企図しているのであろう。つまり、イランの行動はトルコの幻想に基づく行動とは異なり、極めて冷静で現実的な戦略的思考の結果であろう。

 最近伝わってきた情報によれば、イランは1700キロに及ぶイラ・イラク・シリア・レバノンを結ぶ、高速道路の建設に取り掛かるということだ。そのことが事実なのかどうかまだ不明だ、とこの情報ソースは書いているが、ほぼ事実であろうと思われる。

 そうなれば、イランはイスラエルに対して、大きな軍事的脅威となることであろう。いまでもイランはシリアのゴラン高原のそばに、軍を駐留させており、そこにはイランの子飼いの、ヘズブラの部隊も駐留しており、何時でもイスラエルに軍事侵攻できる、状態にあるのだ。

 いまのシリアは、トルコとイランが覇権を争い、ややもすれば、双方の利害が対立する、ということであろう。その場合、トルコはイランのエネルギー資源に頼れなくなる、という不利な状況が起ころうし、イラン側にしてみれば、外貨の獲得や輸出入に、影響が出るということであろう。

 したがって、常識的に考えればイランとトルコの対立は、あまり深刻な問題にはならないのではないかと思われる。イランのロウハーニ大統領は、トルコに対して『シリアはイランの影響下にある。』ということを、強調したいだけかもしれない。あるいは、シリアのアサド大統領の要請によるものかもしれない。そうであって欲しいものだ。