『ボスポラス海峡でタンカーが岸に衝突』

2018年4月 8日

 

 ボスポラス海峡をご存知だろうか。トルコをヨーロッパとアジアに分ける海峡だ。そこは黒海から地中海への出口であることから、極めて戦略的価値の高いところだ。この海峡を利用できなければ、ロシア海軍の力は半減してしまうであろう。

 アメリカはロシア海軍を押さえるために、このボスポラス海峡を通過して黒海に入るわけだが、トルコに何度となく黒海沿岸に、海軍基地の設置を要請し、断られてきている。それはトルコとロシアとの関係を、危険なものにする可能性が、高いからだ。

 ボスポラス海峡は最も広いところで、3700メートル、最も狭い場所で800メートルといわれている。この海峡にかかる橋は、観光名所のひとつであると同時に、庶民の憩いの場所でもある。のんびりと橋の上から、釣り糸をたれている人達が、沢山見かけられる。

 しかし、以前にもあったのだが、その高い価値のある、ボスポラス海峡を通過する船は多く、海難事故が発生する危険性を、常にはらんでいるのだ。数年前には船が炎上し、大騒ぎになったことがある。

 トルコ政府としては、国際海峡であるため、船舶の通過を禁止することは出来ず、安全のためとして、通過量の制限をしている程度だ。船が事故を起こせば、海が汚れ、周辺住民の安全を脅かし、かつ、健康を害することが、多分に懸念されるからだ。

 今回起こった事故は、マルタ船籍のタンカーが、ボスポラス海峡の岸に衝突する、というものだった。その岸のそばには、高層マンション群が建っており、もし、油が引火していたら、とんでもない大事故に、繋がっていたものと思われる。

 運悪く、今回の事故現場はスルタン・メフメト時代の、建築物があるところであり、そのなかのヘキンバシ・サーレハ・エフェンデイ・マンションは、18世紀に建築されたものだが、今でもコンサートや結婚式に、利用されている。

 ボスポラス海峡はロシアにとっては、まさにバイタルな重要性を、持っている場所だ。ここを通過するロシア船は軍艦からタンカー、貨物船に観光客を乗せる客船と、多種多様なのだ。カスピ海沿岸の国々が生産する、石油やガスも黒海に抜けて、ボスポラス海峡を通過して、世界市場に運ばれているのだ。

 今回のボスポラス海峡で起こった事故をめぐっては、多分、国際会議を開催し、同海峡の船舶通過制限や、船のサイズの制限などが、話し合われることになろう。それはエルドアン大統領にとっては、好都合な話になるかもしれない。