『英土の無理な要求が一般化する怖さ』

2018年4月 4日

 

 法と民主主義を国是とするイギリスは、同時に陰謀の大国でもあった。これまで、イギリスが世界に及ぼしてきた陰謀の数々は、今日なお問題を引きずらせている。その典型はイスラエル・パレスチナ問題であろう。

 イギリスは最近、ロシア出身の二重スパイが、ロシア人よって毒殺の憂き目にあった、と公表した。しかも、ご丁寧にも彼の娘もその事件に、巻き込まれたというのだ。もちろん、そのことはイギリスがロシアを暗殺犯として、国際的に非難することに、繋がっているのだ。

 しかし、声高にロシアを非難するイギリスは、何らの確たる証拠も世界に対して、示していない。ロシアにすら証拠を示さずに、非難を繰り返しているのだ。それに対し、ロシア側はイギリスが何も証拠を示していないとして、イギリスの主張を一蹴している。

 この二重スパイの暗殺事件の毒殺犯が、ロシアなのかイギリスなのか、いまの段階では断言できないが、どうもイギリスの無理を、感じるのだがどうであろうか。イギリスはマスコミを使って、ロシアの真犯人説を世界に広め、ロシアを犯人に仕立て上げる、ということであろうか。

 同じような無理が、トルコとアメリカとの間でも起こっている。トルコ政府はアメリカ政府に対して、715クーデター未遂の首謀者は、フェイトッラー・ギュレン氏だとして、引き渡しを要求している。

 この場合も、イギリスの毒殺事件と同じように、トルコはアメリカに対して、フェイトッラー・ギュレン氏が黒幕であったという、確たる証拠は示していない。エルドアン大統領に言わせれば『俺がフェイトッラー・ギュレンを犯人だ、と言っているんだから引き渡せ。裁判はトルコでやる。」という極めて強引な論法であろう。

 もちろん、アメリカはこのトルコ側の要求を、受け入れるつもりはなく、あくまでも明確な証拠を示さない限り、引き渡さないと言っている。それに対し、エルドアン大統領はコソボで、ギュレン・グループの教員を拉致したように、フェイトッラー・ギュレン氏をアメリカで拉致し、連れ戻すと言い出している。

 エルドアン大統領の主張には、何の法的根拠も無いが、それを相手国(アメリカ)に要求し、だめなら拉致して連れ戻すというのだから、法も何もあったものではない。このことに対してアメリカが、トルコを非難するのであれば、同時にイギリスに対しても非難の言葉を向けるべきではないのか。仲間内でお互い敵対する者だけを、非難するのは理屈に合うまい。

 あるいは、いまの時代は力は正義であり、でっち上げた嘘も、マスコミで宣伝すれば、正論になってしまうのであろうか。そこで犠牲になるのは、力の無い個人でしかあるまい。イギリスは紳士の国という看板を、下ろすべき時が来たようだ。