『サウジアラビア皇太子イスラエル認める』

2018年4月 3日

 

 サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、イスラエルを認める発言をしたことが、大きな話題になっている。それはそうであろう。いままでは、イスラエルやユダヤをイスラムの敵とし、パレスチナやアラブ全体は敵と位置づけて来ていたからだ。

 そのアラブ世界の中にあって、サウジアラビアはイスラエル嫌いの、急先鋒であったろう。1979年の段階で、エジプトがイスラエルと国交正常化すると、イラクで開催されたアラブ首脳会議で、エジプトをボイコットすることを決めたのだ。

 その後、なかなかエジプトに追従して、イスラエルとの国交を正常化する国が、現れなかったが、やっと隣国ヨルダンが正常化するに至ったが、ヨルダンに続く国はなかった。

 それがここに来て、サウジアラビアが実質イスラエルの国家としての、存在を認める発言をしたのだから、アラブ世界ばかりか関係諸国を驚かすのは、当然であろう。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「何処の人たちも、何処であっても、彼らが平和に暮らせる国家を持つ権利がある。』と言ったのだ。

 もちろんこれだけで、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の発言が、終わったわけではない。彼は『パレスチナ人もイスラエル人も彼らの土地を持つ権利がある。』と語っているのだ。ここで言われている土地とは、述べるまでもなく国家を意味している。何やらイギリスのバルフォア卿が、歴史の大分後ろで語った、『ユダヤ人の土地=ホームランド』という言葉に、似ている感がある。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がここまで、イスラエル問題に踏み込んだのは、イランの脅威があってのことであろう。サウジアラビアはイランが軍事的に、攻撃してくるという強い恐怖を抱いており、アメリカだけではなくイスラエルの協力も、仰ぎたいと思っているのだ。

 それは、イスラエルもサウジアラビアと同様に、イランの軍事的脅威を強く感じているからだ。そのため、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はイスラエルに、急接近したということであろう。

 アメリカにしてみればこうした展開は、大歓迎であろう。サウジアラビアが巨額の軍事費を出し、イスラエルが軍事テクノロジーを発揮してくれれば、アメリカはその背後から支援する(武器を売るだけ)だけで済むからだ。

 アメリカはできるだけ自国軍が、血を流さずに済む方法、自国が軍事費を使わなくていい方法を、検討しているからだ。悪い言い方をすれば、大国と言われていたアメリカは、人の褌を借りて勝利だけを手にしよう、という算段であろう。それは通用しないのだが、トランプ大統領はインスタント・ラーメンのように、国際関係を動かしたいようだ。