中東版風が吹けば桶屋が儲かる』

2018年3月28日

 

中東でもある意味で、日本の『風が吹けば桶屋が儲かる』式の事が起こるようだ。しかし、この場合は誰も儲からないようだ。関係した者は皆それだけの痛手を、受けることになるのだろうが、それなりのメリットもあるのであろう。

 アメリカはイランが気に食わなくてしょうがないのであろう。何かにつけ難癖をつけて、明日にでも戦争をするようなことを、吹聴している。しかし、アメリカと言えどもそう簡単に、大国イランを相手にして、戦争は始められまい。アメリカの虎の子のアラブ湾岸諸国が、イランのすぐ側にあるからだ。

 そこでアメリカは、イランが核兵器を開発している、という難癖をつけ脅しをかけている。しかし、イランはびくともせずこのアメリカの脅しを、せせら笑っている。ヨーロッパ諸国もアメリカの脅しに、従わなければならないのだが、ヨーロッパ諸国は自国の利益を考えると、全面的にアメリカの意向に沿うことはせず、二つの対応をしているようだ。

 ヨーロッパ諸国はイランに外相レベルの特使を立てて送り、二国関係を促進する動きに出ている。イギリスもフランスもドイツも、皆そうしているのだ。日本もそうしたヨーロッパ諸国の対応を踏まえてであろうか、アメリカの意向とは少し異なる、対イラン関係を構築している。

 最近、アメリカはしびれを切らしたのであろうか、イランと交わしていた核合意を、破棄すると言い出し、ヨーロッパ諸国を慌てさせている。しかも、アメリカはサウジアラビアをそそのかして、軍事緊張を生み出そうともしているのだ。

 そうしたなかで、レバノンのヘズブラはイスラエルに対して、挑発的な動きに出ている。ヘズブラはイランの全面的な支援を受ける、レバノンのシーア派ミリシアだが、大量の武器をイランから送られており、イスラエルとの戦争も辞さないという、強硬な立場を採っている。

 ヘズブラは1982年にイスラエルとの戦争で、大きなダメージを受けたが、イスラエル側にロケット弾やミサイル攻撃をかけ、イスラエル側に相当のダメージを及ぼしている。イスラエル側の戦士に多数の戦死者も出ている。結果的にイスラエルはこのヘズブラとの戦争で、敗北したという評価が生まれたのだ。

 現在の段階では、ヘズブラが所有する武器の数は、1982年当時に比べ、10倍以上になっているものと思われる。シリアでのISISIL)との戦闘経験もあり、へズブラの戦闘員の質は,飛躍的に向上しているものと思われる。

 しかも、イランの革命防衛隊戦闘員が、シリアのゴラン高原側に基地を持ち、武器工場も持っていることから、ヘズブラの士気は上がっているのだ。これでは、イスラエルはヘズブラとの戦争だけではなく、イランやシリアの軍とも戦わなければ、ならなくなるということだ。

 そこが実は重要で、イスラエルはこれまでアメリカをそそのかして、イラン攻撃させようとしてきたが、アメリカには軍を動かす気はない。アメリカは『イスラエルとサウジアラビアが、やるならどうぞ。』という立場だ。そうなれば、イスラエルはイランへの挑戦的な立場を、変えざるを得なくなるということだ。

 もし、イスラエルが安易にイラン攻撃を始めれば、シリアとレバノンの国境から、イスラエルはミサイルの雨を降らせられ、国民も軍人も大きな犠牲を払うことになるだろう。アメリカがイランに圧力をかけると、ヘズブラがイスラエルに圧力をかける、という構図なのだ。こうした中東の戦略的駆け引きは、ゲームととらえて考えれば実に面白い。そのゲームで多数が犠牲になるのも事実だが。