『トルコはマンビジュでの米との衝突を避けた』

2018年3月27日

 

 トルコのエルドアン大統領が、突然マンビジュではなく、テルリファアトを攻撃する、と言い出した。このテルリファアトもシリア北部の、重要拠点であることに間違いは無いが、これまでルドアン大統領は、何度もアフリンの次はマンビジュを攻撃する、と繰り返していた。

 それが突然のように、アフリンの次のトルコ軍の攻撃目標が、何故マンビジュからテルリファアトに変わったのか、ということが気になるところだ。このニュースを見たとき浮かんだのは、実はこれはマンビジュでのアメリカ軍とトルコ軍の、武力衝突を避けるということだろうと思った。

 その後、エルドアン大統領もトルコの外務省も、アメリカとのマンビジュをめぐる問題は解決済み、といったニュアンスの発言を、繰り返している。エルドアン大統領はそれでもアメリカに、一言言わずには気が済まないのであろう。『マンビジュはその所有者に明け渡すべきだ。』と言い出している。

 つまり、エルドアン大統領はマンビジュ問題について、最終的にはそこからアメリカ軍は撤退しろ、と言っているのだ。もし、そうなればトルコの目的は、達成されることになろう。北シリアのマンビジュは、アメリカ軍が撤退すれば、完全にトルコの支配下に、入るからだ。

 しかし、そもそもアメリカにとって、北シリア地域を押さえたい理由は、石油やガスのパイプ・ラインを通す目的があるからだ。それを達成するために、IS(ISIL)は結成されイラクとシリアで広大に地域を、支配下に置くことになったのだ。

その後は、イラクもシリアもアメリカの思惑通りになる、とアメリカは考えていたのであろう。しかし、シリアにはトルコ軍が進攻し、トルコとアメリカの利害が対立する状況が発生しているし、そのトルコはシリアを支援する、ロシアとの関係を拡大している。

シリア軍は現状では極めて有利となり、アメリカが考えるようなアサド体制打倒は、起こりえなくなってきている。イラクでもアバデイ首相は『アメリカ軍は早急に出て行け。』と言い出し、何がしかのアメリカ軍の駐留は認める、といった発言もしている。そのイラクではイランの台頭が、シリア同様に目立ってきているのだ。

こうしてみると、アメリカはシリアでもイラクでも、目的を達成出来ずに、撤退する時が来るかもしれない。その最大の理由は、アメリカのいまの政府には、大規模な戦争を始める度胸も資金も、無いということであろう。

トランプ大統領が口にする世界を恫喝する強弁は、プーチン大統領にしてみれば、絵に描いた餅のようなものであろう。何の凄みも無いということだ。それでも中国もヨーロッパもアメリカの顔を立てて、トランプのほら話を聞き入れている、恐れているようなそぶりをしているのであろう。

ロシアはシリアでの作戦で、自国の持つ武器の優秀さを、世界に宣伝出来た。トルコはロシア製のS400ミサイルを、購入することを決めているし、アラブ湾岸諸国も然りだ。トルコは静かにロシアに接近し、やがてはアメリカとの関係を疎遠にして行こう。今の段階では、マンビジュでのアメリカとの武力衝突は、避けるのが賢明な策であろう。マンビジュの代わりはテルリファアトだということだ。