『エジプト選挙とテロの関係』

2018年3月25日

 

 来週、エジプトでは大統領選挙が実施されるが、シーシ大統領には不安があるようだ。客観的に言って選挙結果は、シーシ大統領の勝利間違い無しなのだが、できるだけいいイメージで再選されたい、ということであろう。

 シーシ大統領にとって気がかりなのは、エジプト国内であいも変わらず、テロ事件が起こっていることであろう。シナイ半島北部のISなど、イスラム原理主義テロ集団との戦いは、未だに続いている。

 そのシナイ半島北部でのテロ掃討作戦を、有利にするためにシーシ政権は、シナイ半島北部の部族に対して、食糧援助などを積み増ししたようだ。シナイ半島の部族の協力無しには、テロに関する情報を集めにくいのだから、当然の措置であろう。

 しかし、イスラム原理主義者らによる、テロは相変わらず続いており、遂には、アフリカ大陸側でも、起こるようになっている。いわゆるナイル・デルタと呼ばれる、エジプト北部のナイル川の、沿岸地域のことだ。

 イスラム原理主義者のなかの、IS(ISIL)によるテロは、最も危険なものであろうが、それを支援しているのではないか、と思われるのはムスリム同胞団の活動だ。ムスリム同胞団はいまシーシ政権下で、強烈な弾圧を受けており、多くのメンバーが投獄されているだけではなく、死刑宣告を受けているのだ。

 つまり、エジプト政府はいま、ムスリム同胞団とIS(ISIL)という、イスラム原理主義の強力な敵と対峙している、ということだ。つい最近、ナイル・デルタの北端アレキサンドリア市でテロ事件が起こったが、このテロでは二人の警官が犠牲になっている。

 述べるまでも無く、このテロは選挙前に国民の間に、不安を拡大しようということであり、シーシ大統領にはテロをコントロールすることは出来ない、ということを、国民に宣伝するためのものであろう。また、テロを起こすことにより、国民を不安がらせ、投票に向かう足を止め、投票率を下げることも、狙っているのであろう。

 エジプトの経済状況は外国からの借り入れで、帳簿上は外貨が増えてはいるのだが、決していい状態とはいえまい。IMFは資金を提供すると同時に、各種の経済政策で改善しろ、と圧力を掛けている。その結果は、国民の負担が大きくなるということだ。IMFのアドバイスは劇薬なのだが、経済状況が苦しいエジプトとしては、それを承知で受けざるを得ないのだ。

 テロ問題と経済問題は今度の選挙でも、一番の課題であろう。シーシ大統領は76パーセント以上の得票数で、再選されるだろうが、やはり何処か不満と不安がある、ということだ。エジプトの選挙に向けた難問の解決は、容易ではない。