『リビアはアフリカ難民の出港基地』

2018年3月11日

 これまで何度と無く悲しいニュースが、伝えられてきていた。しかし、それは直接アラブのニュースではなかったために、放置してきていた。だが、人道的にも無視し続けることは、限界だろうと思い書くことにした。

 リビアはかつてアメリカが語ったように、アフリカへの入り口の国だ。その事は逆に言えば、アフリカからの出口ということでもある。このためリビアまで出てきたアフリカ人たちは、リビアから地中海の反対側の国、イタリアに移住しようとするのだ。もちろん、イタリアから他のヨーロッパの国を、目指す者もいよう。

 彼らアフリカ人たちの移動手段は、まず蜜輸送をしてくれる業者に、カネを払いボートに乗り、イタリアに向かうということだ。そのボートにはあふれるばかりの多数が、乗せられているために、地中海で沈没するという事故も、何度も起きていた。

 ボートが沈没すれば、乗員は全てが死亡する、ということになるのだ。そのため、これまでは何度と無く、リビアから出た難民がウン百人死亡、というニュースが繰り返されてきていた。それだけ危険でも、アフリカの人たちはヨーロッパ行きを、希望するのだ。

 ボートに乗るためには、500ドルから1000ドルのカネを、払わなければならない、とも伝えられてきていた。つまり、ボートに乗るアフリカ人は、比較的豊かな家族の出身か、あるいは家族親族から金を集め、乗り込んでいたものと思われる。一人がヨーロッパに渡ることが出来れば、難民申請が認められた後で、家族を呼ぶことも可能な道が、開かれるのだ。

 もう一つの渡航資金調達法は、リビアの南西部に陣取る、IS(ISIL)への戦闘員としての参加であろう。その事によって、渡航資金を貯めている者もいよう。いずれにしろ、それも危険極まりないことではあるのだが。

 先週の土曜日には、トリポリの西45キロにあるザーウイヤの港から、ボート2艘が出航した。しかし、一艘は沈没し、125人が犠牲になっている。もう一艘に乗っていた112人は救助船に助けられて生還し、トリポリの東のガラブリ港に送られた。

 このボートに乗っていた者の半数が、ナイジェリア人であり、残りはサハラ地区のアフリカ人、そしてパレスチナ人も数人が乗り合わせていた。彼らは秘かに、真夜中に出港していた、ということだ。

 これまでに、リビアなど、北アフリカから地中海を渡って、イタリアに向かった者は、過去4年間で60万人に達しているということだ。つまり、それ以外にも移住希望者はいて、多くが地中海の海に、飲み込まれて死亡したということだ。

 人間がよりよい生活環境を望むのは、自然なことであろう。しかし、それにしても、犠牲が大きすぎると思うのだが、このアフリカ人のヨーロッパへの流れを止めることは、極めて困難であろう。