『イラクのISはいまだ健在というニュース』

2018年3月 5日

 

 イラクのモースル二陣取っていたIS(ISIL)は、イラク軍の攻撃を受けて陥落し、イラクにおけるIS(ISIL)の存在は、消えたとされている。勿論、アバデイ首相は勝利宣言をし、IS(ISIL)は掃討された、と言ったのだが、その後も散発的ではあるが、IS(ISIL)の活動はイラク国内で、続いている。

 そうした状況が、何故続いているのかということを、最近分析したハーシムという人物がいるが、なるほどと思う部分が、無い訳ではない。

 218日には、キルクークに近いサアドニーヤ市で、IS(ISIL)が戦闘を仕掛けている。その結果、IS(ISIL)側には27人の戦死者が出た、と報告されている。それ以外の戦闘員は、現場から逃走したということだ。

 こうしたことから分かることは、IS(ISIL)には未だに、攻撃能力が残っている、ということだ。そして、イラク政府の解放地域に対する、配慮が足りないために地域には、IS(ISIL)支持者が残存している、ということだ。

 IS(ISIL)は数年に渡って、彼らが解放したモースル、ラマデイ、テクリートといった大都市を支配下に置き、統治することが出来ていたのだ。つまり、それなりの市民サービスが、行き届いていた、ということではないのか。

 そうしたIS(ISIL)が統治していた幾つかの都市は、戦略的に重要であり、なかでも、モースルの戦略的価値は高かった、ということであろう。モースルはクルド地域に接近しており、シリア国境にも近い場所なのだ。

 IS(ISIL)はシリアとイラクの国境の、ユーフラテス川沿いに潜伏している模様だが、彼らが今後、再度の攻勢に出てくることは、予想しておくべきであろう。そして彼らはアメリカの支援を、未だに受けており、瀕死の状態にある、とは言え無いようだ。

 シリアやイラクの激戦地域から、アメリカはIS(ISIL)の戦闘員と家族を救出し、国境地域に移したり、外国に逃避させたりしている。つまり、アメリカにとってIS(ISIL)は、未だに有効な武器だ、ということであろう。

 もう一つの問題は、イラク軍の猛攻で家を破壊され、家族を殺されたIS(ISIL)の若い層が、次第に成長し、一人前の戦闘員になっていく、ということだ。彼らIS(ISIL)のイラク国内残存者数は、10万人だということのようだ。

 このIS(ISIL)の新世代は、現在の戦闘員よりも強固なのではないか、と思われる。なぜならば、彼らは幼い頃から戦闘を訓練され、思想を叩き込まれ、家族を殺害された恨みと怒りを、体制側(イラク政府)に対して、抱いているからだ。

 あるいはこれから、IS(ISIL)は第2ラウンドの挑戦を、してくるかもしれない。イラク政府はアメリカを始めとする外国軍に対して、『一日も早くイラクから出て行け。』と言っているが、果たして新生IS(ISIL)との戦いで、イラク軍は戦いに勝利できるのであろうか。