『アメリカとトルコの見えない戦争』

2018年2月28日

 

 これは私の推測に過ぎないのだが、最近になって次のようなことが、考えられるのではないか、と思い始めている。それはトルコとアメリカのシリアに於ける利害が、露骨に対立していることから、双方は一歩も譲らなくなり、武力衝突を起こすのではないか、という懸念だ。

 しかし,トルコはNATOのメンバー国であることから、アメリカがトルコに対して、直接的な軍事行動を起こすことは、ありえないだろうと思われる。そこで考えられるのは、アメリカが裏舞台でトルコを、追い込んでいくという形だ。

 アメリカはシリアのマンビジュ作戦で、シリアのクルドと連携しており、こうした作戦のために、既に、SDFなるクルドを主体とする、戦闘集団を結成している。アメリカはマンビジュに長期駐留する方針だが、トルコはこれまで何度も、マンビジュを攻撃するのでアメリカ軍は出て行け、と言ったのに対しアメリカ軍は『撤収意志はない。』と繰り返している。

 しかし、トルコも頑迷であり、シリアのアフリンを攻略した後は、マンビジュ作戦を実行すると言っているが、そうなれば、トルコ軍とアメリカ軍が、武力衝突を起こすことが考えられる。それは、アメリカにとってもトルコにとっても、最悪の場面であろう。

 そこでアメリカが考えているであろう、と私が想像しているのは、『アメリカはトルコ軍をアフリンに貼り付けさせ、勝利できずに長期駐留させる。』というパターンだ。そうなれば、トルコ軍はアフリンに加え、マンビジュでも戦闘を展開するというわけには行かず、結果的に、アメリカ軍と武力衝突する場面は、生まれないということだ。

 最近、トルコ政府の要請にもかかわらず、アメリカはSDFに対して、大量の武器を供給しているが、そのなかには相当最新型の武器も、含まれているということのようだ。そうなると、もし、トルコ軍がSDFと戦闘になれば、トルコ軍側にはしかるべき損失が、生まれるということだ。

 シリアのアフリンでトルコ軍と対峙しているのは、述べるまでも無く、クルド・ミリシアであり、彼らはアメリカの支援する、SDFの中心的な戦闘集団なのだ。従って、今後、アメリカによって提供されているであろう、対空ミサイルが使用され、トルコの戦闘機が撃墜されるという場面が、生まれるのではないだろうか。

 トルコ軍がアフリンで明確な勝利を、収めることが出来ず、長期間に渡って戦闘を続ければ、トルコの将兵に犠牲が増え、トルコ国内では厭戦、反戦気分が高まっていくのではないか。

 そうなればアメリカ軍はマンビジュに駐留し続けられ、しかもトルコ軍と戦わずに済むであろう。その程度のことはアメリカでも、考える人物がいるのではないか。