トルコは1月末にシリアに、軍事侵攻したが、その後3週間以上が過ぎても、しかるべき成果は生まれていない。それどころか、シリア内部では新たな展開が、始まっているようだ。
シリアの政府軍と政府支持のミリシアが、戦闘で協力体制を取り始めているのだ。従って、アフリンでのトルコ軍は厳しい状況に、追い込まれる危険性が高まっている、ということであろう。
シリア軍と政府支持のミリシアは、クルドが主体なのだが、一部の報道によれば、ラッカ陥落で放り出されたIS〈ISIL〉の元戦闘員が、最近ではシリアのミリシア・グループに加わっている、ということのようだ。
こうなると、トルコ軍はシリア軍と、政府寄りのクルド・ミリシアと、IS(ISIL)の残党と、戦わなければならなくなるということだ。それは大変なことであろうと思われる。
シリアの国内に入れば民間人も含め、周辺にいる人たちは全てが敵だ、と思わなければならなくなるからだ。突然ナイフを手にして、襲い掛かってくる者や、銃器をもって襲ってくる者、爆弾を使って攻撃してくる者などが、想定されるからだ。
そのことに加え、いまトルコ人の間で密かに語られていることは『イランが参戦して来るのではないか?}という不安だ。既に、イラン軍はシリア国内に駐留しており、相当量の武器も持ち込んでいる。先日は、そのイラン軍がイスラエル軍の戦闘機を、撃ち落としてもいるのだ。
もし、イランが参戦すれば、トルコ軍は先に挙げた3つの戦闘集団に加え、イランとも戦わなければ、ならなくなるのだ。その結果は、多数のトルコ兵が死亡する可能性が、高いということであり、トルコ国民としては、座視して放置できる、問題でなはかろう。
しかも、イランはシリアを数少ないシーア派体制国家(シーア派の中のアラウイ派がアサド大統領の基盤))とみなしており、出来るだけ多くの期待を、この国に向けたいと思っている。
だが、そうだからと言って、イランがトルコに攻め込まれている、シリアにトルコと戦うための軍を送り、トルコと一戦交えるかというと、確率は低いのではないか。それはイランがいま、シリアそしてその先にある、イスラエルと緊張関係にあること。
イランはイエメンではホウシ派を支援しており、対局の側はサウジアラビアやアラブ首長国連邦に支援を受けている。そして、アメリカとイランとは核問題をめぐって、一触即発の危機的状況にある。
そうしたなかでは、イランがトルコに戦争を挑むとは考えられない、というのが私なりの判断なのだ。その私なりの判断を、何人かのトルコ人に話したが、まだ彼らには不安がありそうだ。当然であろう、彼らはこの緊張問題の、当事者なのだから。