『エジプト・イスラエル大型ガス取引成立だが』

2018年2月22日

 

 エジプトとイスラエル政府が、大型のガス取引契約を結んだ。その額が150億ドルというのだから、まさに大型契約であろう。しかし、その詳細についてエジプト政府は、国民に明かそうとしていない。

 その理由は二つ三つ考えられる。一番簡単な理由は、イスラエルのガス資源が、実はレバノンとの係争地から産出されるものだ、ということだ。従って、その契約内容を公にすれば、エジプト政府はレバノン政府から、非難される可能性があるということだ。

 第二の理由として考えられることは、エジプト国民の感情問題だ。1979年にエジプトとイスラエルは、平和条約を結んだとはいえ、いまだに多くのエジプト国民は、イスラエルに対して敵対感情を、抱いているのだ。

 そのエジプト人の敵であるイスラエルから、大量のガスを購入するということは、まさに敵に塩を送る行為だ、ということになろう。加えて、潜在的敵国であるイスラエルに、エネルギー資源を依存するということは、極めて危険ではないかということになろう。

 もし エジプトとイスラエルとの間に、何か問題が発生すれば、ガスはイスラエルが止めることになり、その途端にエジプトはエネルギー危機に、落ち込むことになるからだ。それではエジプトはイスラエルに対して、弱い立場に立たされるということになろう。

 この問題は、エジプト国民が根強く抱いている、イスラエルに対する不信感によるものであろう。1973年の第四次中東戦争後、エジプトとイスラエルとは、平和な関係に向かって動き出し、今日に至るのだが、感情という厄介な物は、なかなか取り去れない、ということであろう。

 確かに今後、何らかの不測の事態が生じれば、イスラエルとエジプトが敵対し、ガスの供給が止まることもあろうし、戦火を伴うこともあろう。常識的には起こりえないことが、歴史の中では何度も、繰り返されてきている。

従って、エジプト国民がイスラエルに対して、強い不信感を抱き続けており、いまだに信用していないとしても、非難するには当たるまい。人間の愚かさは、人間が信じ考え出した常識よりも、強いのだから。