20世紀の初め頃であったろうか、トルコに偉大なスンニー派のスーフィー学者がいた。彼の名はバデーウッザマン・サイド・ヌーリシーだ。彼は政府の弾圧を受け、何度も刑務所生活を繰り返したが、自説を曲げようとしなかった。
彼の教えはその後、何人かの学者たちによって、受け継がれるが、その学者の一人が、いまエルドアン大統領と対立している、フェトッラーギュレン氏だ。彼も自説を曲げようとはせず、彼と彼のメンバーはトルコ政府の、強い弾圧を受けているが、エルドアン大統領に妥協しようとはしていない。
そのバデーウッザマン・サイド・ヌーリシーが語った話が、いまトルコ国民の間で、話題になり始めているようだ。それは『オリーブを語る者は敗北する。』という言葉らしいのだが、今回のエルドアン大統領のシリア侵攻作戦は『オリーブの枝作戦』と名付けられている。
トルコには幾つものタリーカ組織が存在するが、それは秘密結社のようなものなのだ。そして、そのタリーカのほとんどがスーフィーであり、そのまたほとんどが、バデーウッザマン・サイド・ヌーリシ―思想を受け継いでいる、ということのようだ。
トルコ軍のシリア侵攻の現状は、どうなっているかというと、クルド勢力とシリア軍とが、共闘する形になってきている、といわれている。しかもこのクルドは、アメリカに支援を受けているのだ。そのことはトルコが窮地に立っている、ということだ
トルコがロシアに泣きつくと、ロシアはトルコとシリアが直接話し合って、解決しろと突っぱねて、相談に乗ろうとはしていない。楽観的な見通しもないではないが、現実は厳しいのではないか。
そうしたなかで語られ始めているのが、トルコの分割だ。トルコを二つに分けて弱体国家にすることを、欧米もロシアも望んでいるというのだ。それは十分ありうる話であろう。
以前、トルコ国内のクルド人たちの多くは、トルコ国民の立場を維持したい、と願っていたが、いまでは分離独立できるのなら、そのほうを選択する、と考えている者が多くなっていよう。
トルコのエルドアン大統領の強圧対応が、PKKを元気づけ、トルコのクルド人を激怒させた結果だ。バデーウッザマン・サイド・ヌーリシ―の予言は現実のものとなるのではないか。