『アメリカの思惑は外れている』

2018年2月 9日

 

 最近、目立っているのはアメリカもトルコも、自軍を前面に立てずに、他を使って戦争を行っていることだ。アメリカはシリアでSDF(クルド・ミリシアが主体の)を使って、戦争をしているし、トルコもFSA(シリア自由軍こちらはアラブ・クルドなどの混成部隊の反アサドミリシア)を、前面に立てて戦っている。

 つまり、自分の手は汚さずに勝利の果実だけを、手に入れようという作戦だ。しかし、そうした手法は成功すまい。当初トルコとアメリカの支援を受けていたFSAは、アメリカが提供した武器を、容易に敵側のアルカーイダやIS(ISIL)に渡していた。

 アメリカは物量でその時その時の状況により、手を組む相手を変えてきている、アルカーイダもIS(ISIL)も、FSAもかつてはアメリカの盟友だったが、いまではクルドのミリシアが最も信頼できるとして、SDFを結成しそれに主体的に、援助を行っている。

 だが、そのSDF(実体はYPG)との連携にも、ひびが入り始めているようだ。YPGはトルコと敵対しているわけだが、そのトルコとアメリカは裏で通じている、という不信感が広がっているからだ。

 シリアのアフリンでの戦闘では、アメリカは関与しない立場を取っており、トルコはロシアと共同で、アフリンのクルドをせん滅しにかかっている。ロシアには反アサドのクルド・ミリシアを、叩きたいという考えがあり、トルコはクルドが強化されれば、トルコ本土が危険になる、ということであろうか。

 トルコは攻勢に立っているためか、至って鼻息は荒く、アフリンの次の攻撃目標である、マンビジュについてアメリカ軍は出ていけ、そうでないとトルコ軍と戦うことになる、とアメリカに警告している。

 アメリカはマンビジュを死守するつもりであり、トルコにマンビジュを手渡す気はない。そうなると、アフリンでトルコに対抗する動きは、採れないということだ。そうすることによって、トルコとの妥協を生み出す、考えなのであろうか。(この裏にはシリアの石油支配がある)

 マンビジュではアメリカの利益のために戦っている、クルド・ミリシアがアフリンではアメリカの支援を受けられない、ということは納得がいくまい。結果的にアメリカに対するクルド側の信頼度は、大幅に下がったということであろう。

 アメリカはこれまでのいずれの戦争でも、友軍を道具として使い、その後に使い捨ててきたが、シリアでも同じことを繰り返している。その結果、ロシアに対する信頼度が上がり、ロシアはアメリカに対して中東全域で、優位に立つようになった。

 どうもアメリカの株の暴落の繰り返しと言い、アメリカは賢い判断が、出来なくなってきているのではないだろうか。