アメリカはシリアに軍を送り込みIS(ISIL)の掃討を行う、と主張してきていた。しかし、ここに来て妙なことが、起こっている。述べるまでも無く、SDF(YPGが主体の親米勢力)はアメリカが創った、反アサド先頭集団だが、これがYPGが主体の戦闘集団であることは、周知の事実だ。
そのSDFが打倒したISISIL)の戦闘員について、これまでとは全く異なる対応を、見せているのだ。SDFはIS(ISIL)の戦闘員のうち、SDFに参加を希望する者120人を受け入れ、SDFの戦列に加えた。そればかりか、残りの400人については、釈放したというのだ。
SDFがアメリカによって結成された、組織であることを考え、もし、アメリカが主張していたように、アメリカ軍のシリア侵攻が、IS(ISIL)の撲滅を目的とするのであれば、起こりえないことであろう。しかし、現実にはそれが起こっているのだ。
このことは、SDFがアメリカとは異なる戦術を、選択しているのではなく、SDFはアメリカのコントロール下にある傭兵部隊であり、同時にIS(ISIL)もアメリカの傭兵だということであろう。
だからこそ、SDFは容易にIS(ISILの投降戦闘員を、自分たちの戦列に加え、その意思の無い者は、釈放したということであろう。こうした動きは、トルコにとっては極めて不愉快な、ことであろう。このため、トルコのエルドアン大統領は再三に渡って、アメリカのシリア対応を、非難しているのだ。
アメリカの完全な庇護の下で、大量の武器を与えられて強化されていき、SDFは将来のトルコの最大の敵となろう。そのSDFはYPGやPKKと連携して、シリア北部に自治区を創る、方針だといわれている。
トルコの南東部に隣接する、シリア北部がクルドの自治区になれば、トルコのPKKは、トルコとシリアを自由に往来し、トルコ軍と戦闘を展開することになろう。これに対して、トルコが攻撃を加えれば、アメリカを始めとする先進諸国は、トルコによるシリアへの軍事侵攻だと言って、非難することになろう。
シリアもまたトルコと並んで、SDFの拡大を喜んでいないかもしれない。そうであるとすれば、近い将来、シリアとトルコが協力体制を、組むこともありえよう。現段階では、秘密裏にトルコ側とシリア側との交渉が、行われているという情報も、あるのだ。
ただ、クルドの組織YPGやPDK)が、シリア政府と協力関係にあり、対IS(ISIL)戦闘を行ってきているという情報もある。このことは、シリアの状況が極めて複雑だ、ということだが、これまで、クルド組織とシリアが連携していたのは、あくまでもIS(ISIL)対応であり、いまは新たな段階に入ったために、連携関係が変わって来ている、と考えれば、何の不思議も無い。それは、シリアとトルコとの関係も、同じようなものであろう。