昨年末にイラク政府は、IS(ISIL)掃討作戦を完了した。その後、アバデイ首相はイラク領土が、シリア国境に至るまで、IS(ISIL)から解放された、と宣言している。しかし、それでイラクの敵が全て消えた、というわけではない。
イラクは今回逮捕者60人の名前を連ねた、リストを公表することになった。そのリストには、故サダム・フセイン大統領の長女、ラガドの名も載っている。そしてバアス党員の幹部、20人の名も書かれてある。
それ以外には、IS(ISIL)のメンバー28人の、名前が記されてあり、アルカーイダのメンバーの名も、12人が掲載されている。逮捕者リストには、従って60人の名が連ねられている、ということだ。
ただ不思議なことに、この逮捕者リストには、IS(ISIL)のトップであるバグダーデイの名は、記載されていないということだ。それはイラク政府が『バグダーデイは死亡した。』と判断してのことなのであろうか。
サダム・フセインの長女ラガドについては、旧バアス党員を集め、現体制を打倒することを考えている、と説明している。彼女にはいまだに莫大な資金が、残っているというのだ。そして、彼女はいまヨルダンのアブドッラー国王の庇護の下に、ヨルダンで亡命生活を送っている。
アラブ世界の現代政治史は、まさに小説よりも奇なりと言える、興味深いものだ。復讐の女王サダム・フセインの長女ラガドが、これからどんな手を打つというのであろうか。ただ言えることは、リビアの場合と同じように、冷静に考えると庶民の生活は、カダフィ
の時代、サダム・フセインの時代のほうが安定し、豊かだったという事実がある。
その昔を思い出す庶民が、死んだ独裁者の体制の復活を望む、ということは十分にあり得よう。日本の様な自由で安定した社会では、考えられないことなのだが、独裁者はアラブ世界だけではなく、発展途上の国の多くでは、必要悪の部分があるのだ。