『サウジアラビアはイスラム法を破るのか』

2018年1月28日

 

 私がイスラム教を勉強していたのは、もう50年も前になったのだから、不確かな気もするのだが、イスラム法には『人をその家から追い出してはならない』というのがあったような気がする、灼熱の砂漠では、家を追い出されることは、死を意味しているからだ。

 家を追い出されるということは、水も食料も無くなることであり、炎天下では生きていけまい。そして冬の砂漠は、日本人が想像するよりも寒い。サウジアラビアでも雪が降るところは、幾らでもあるのだ。先日はレバノンに逃れていたシリア難民が、山岳部で十数人が凍死した、というニュースが伝えられていた。

 サウジアラビア政府はサウジアラビアの王族や、大金持ち政府の高官などに対する、汚職疑惑に関わる取調べを、行ってきていたが、その結果、定められた罰金を支払う者は釈放し、それを拒否する者は投獄する、という対応をした。

 その事に加え、罰金支払い拒否組みに対しては、家屋を没収することを決めた、と伝えられている。日本人からすればまさに、お城のような豪邸を、政府が取り上げてしまうということだ。そして、その事は述べるまでも無いが、その家の住民は家から、追い出されるということだ。

 そうした家では多数の従業員が雇われていよう。東南アジアなどからの出稼ぎの、家政婦や男性従業員、ドライバーは、何の保証も無くその家から、追い出されるのではないのか。家の主人が巨額の罰金を、政府によって要求され、家を没収されるのだから、彼らには何を言う権利も、与えられまい。

 日本でも知られる大金持ちのタラール・ビン・ワリード王子の場合は、莫大な罰金を支払うことを条件に、釈放されたと伝えられている。その罰金の額は、数兆円にも上るものだったような気がする。まさに眼が回るような金額だ。

 タラール・ビン・ワリード王子はサウジアラビアの、王位継承権を捨てて、ビジネス一本やりの人生を選んだ人物として知られ、これまで世界のテレビネット、インターネット、映画など、マスメデアを買収して来た人物であり、欧米には著名な友人も多くいる。

サウジアラビア政府が実際に、どれだけの罰金を彼から取ったのかは分からないが、しかるべき段階で、手を打つ方がサウジアラビアの国のイメージを、良くすると考えたのかもしれない。

 今回の汚職事件は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の、いわば独断で進められたものの様に思えるのだが、あまり長引かせては、国内の高位高官大金持ちの反発を、受けることになろう。未だに投獄されている、多くの財閥や高官はいるだろうが、一応これで汚職事件は終わり、ということになり、話題にはなるまい。

 その次に待っているのは、サウジアラビア社会のモダン化だが、これはやはり宗教が絡むことだけに、そう簡単ではあるまい。サウジアラビアではサウド王家誕生をめぐり、イスラム原理主義のワハビー派と結託している。サウド家は政治を牛耳り、ワハビー派は宗教を管轄する、という取り決めだった。

 しかし、その後、石油の価格が上がり、王家の人達が大金持ちになってくると、ワハビー派の権限は低下してきていた。今回のムハンマド・ビン・サルマン皇太子の『モダンなイスラムに帰ろう』という呼びかけは、西側の人達からすれば大きな前進、と思えるのだが、ワハビー派の人達からすれば、許せないことであろう。

 このサウジアラビアのモダン・イスラムの実施で、サウジアラビア政府は女性の運転、サッカー観戦などを許可している。そしてイランでは無いが、ヘジャーブを緩くかむることが、若い女性たちの間で広まるのではないか。宗教問題は日本人が考えるほど安易なものではない。場合によっては血を見ることになり、内乱にも繋がる危険性もあるのだ。