『アメリカトルコの不信と対立高まる』

2018年1月24日

 

 いまトルコがシリアの北部アフリンに、軍事攻撃をかけているが、このことは、トルコとアメリカとの関係を、悪化させている。トルコがシリアで攻撃を加えているのは、アフリンという街に集まるSDF(クルドミリシアのYPGが主体、アメリカが支援する組織)を、打倒することが目的だ。

 他方、アメリカはSDFを本格的に支援し、シリアの北部をシリア政府から分離させ、そこを一大軍事拠点とする計画のようだ。そうなれば、アメリカ軍はトルコのインジルリク空軍基地を、使う必要は無くなろうから、トルコとの関係は終わる可能性がある。

 アメリカは出来るだけ北シリア地域を、温存したいとも考えていよう。そこにトルコが軍を派兵し、攻撃を加えるのだから、対立しないわけはあるまい。しかも、トルコ政府はアフリン攻撃の後は、マンビジュ攻撃だと息巻いている。

このマンビジュはアフリンよりも、東側に位置するところだが、そこには多数(ほとんど)のアメリカ軍が、集結しているのだ。加えて、アメリカの外交官、情報機関員、傭兵部隊も集まっているのであろう。

もし、トルコがアフリン攻撃の後、マンビジュに攻撃を加えることになれば、アメリカ軍と正面衝突するか、アメリカが撤退するか、のどちらかであろう。アメリカとすれば、シリアの北部を今後の中東戦略の、一大拠点とする気であり、そう簡単には引くことはできまい。

アメリカはそうした事態を、未然に防ぐためにトルコに何度となく、アフリン作戦をやめろ、と警告してきたが、エルドアン大統領は作戦は順調に進んでいるとして、一歩も引く気配を見せていない。

トルコの野党第一党CHPを始め、各派やアルメニア協会やユダヤ協会など各団体も、エルドアン大統領の対シリア作戦を、支持している。それはトルコにいま500万人のシリア難民が、住み着いているからだ。早くシリアの一部を解放し、そこに難民を追い返してしまいたい、ということだ。トルコは国境のアッザーズにシリア難民のための、3000人収容可能な、テント村を建設中だ。

他方、アメリカにしてみれば、シリアのクルドは信頼に値する組織であり、戦闘能力も高く、利用価値は高い、ということだ。事実、IS(ISIL)作戦でクルドのYPGや、SDFが果たした役割は大きかった。

 こうした状況を考えると、近い将来何らかの軍事的衝突が、トルコ軍とアメリカ軍との間で、起こるかもしれない。それは、トルコにとってもアメリカにとっても、高い代償を払うことに、なるのではないか。問題はこのことに仲介する国が、あるかということだ。フランスやイギリスは、それを考えているかもしれない。