イランはご存知の通り、産油国でありしかも、産出する石油の量は、少なくない。従ってアラブ湾岸の産油諸国同様に、イランは豊かな国のはずだ。また、そうした豊かな国の国民も、豊かな暮らしを保証されて、しかるべきだと考えよう。
だが、実際のイランはそうではなく、高い失業率、貧困レベル以下の国民が多いこと、物価高で苦しんでいるのだ。このためイランの第2の都市マシャドでデモが発生している。
このデモはマシャドばかりではなく、イラン各地でも起こっているようだ。ネイシャブール、カシュマル、ヤズド、シャフルードでも起きているようだ。このデモがどの程度のものであるのかは、インターネットを通じて送られてくる、映像で分かろう。
数千人かそれ以上の住民が、デモに参加しているのだ。どうもいまのところ、警察はデモ取締りを、強化していないようであり、放水車が使われたという話が、伝わってくる程度だ。
イランの社会情勢の専門家に言わせると、マシャドのデモが誰によって提案されたのか、不明だということだ。しかし、物価高や失業率が上がったからといって、自然発生的に大規模デモが、起こるとは思えない。
しかも、イラン各地でほぼ同時期に、始まったということは、しかるべき組織が、裏で指揮を執っているのであろう、ということが考えられる。デモ参加者は『ロウハーニに死を!』『独裁者に死を!』と叫んでいるということだ。独裁者とはイランの最高権威者である、ハメネイ師を意味しているのであろう。
また、デモ参加者たちは『金は何処へ消えたのだ!』とも叫んでいるということだ。それは高い失業率や物価高に対する怒りからであろう。現在イランの失業率は、公式発表で12・4パーセント、前年に比べ1・4パーセント上がっている、ということのようだ。
今回の起こっているデモの裏には、しかるべき反政府組織が存在し、彼らが指揮している、と考えるのが自然だろうが、外国の関与も十分にありえよう。イスラエルやアメリカ、そしてサウジアラビアはイランに対して、戦争を始めてもおかしくないほど、関係が悪いのだ。なかでも、イスラエルとサウジアラビアの、イランに対する敵対感情には、尋常ではないものがある。
これからイランのデモがますます、国内全域に拡大していくのか、あるいはある時期が来たら止まるのか、ということだが、拡大していく可能性の方が、高いのではないか。政府はシリアやレバノン、イラクなどに軍事介入し、ヘズブラなどに莫大な支援を、行っているのだから、国民から文句が出て当然であり、それを止めない限り、国内経済は良くなるまい。しかも、石油は60ドル台と、いまだに低価格に、留まっているのだ。