国連がエルサレムに関して、アメリカのトランプ大統領が、エルサレムは不可分のイスラエルの首都である、と決定したことについて、メンバー国に賛否を問う投票が行われた。その結果はアメリカを激怒させたようだ。
ハーレイ米国連代表は、トランプ大統領の決定に反対するという動議に、賛成票投じた国の名前をしっかり記憶して、しかるべき対応を採ると脅した。つまり、トランプ大統領の決定に反対する国については、今後経済援助をしない、と言い放ったのだ。日本的常識からすれば、極めて品のない発言なのだが。
その事には早速トルコが反発し『あまりにも下品だ。』と非難し、『金で相手を買収しようとすることに対して、心を売りはしない。金で何でも自由に出来ると思うな。』とアメリカを非難した。そう感じたのはトルコだけではあるまい。
パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長は『アメリカは中東和平の仲介者としての立場を失った。公平な仲介者ではなくなった。』とアメリカ政府に激しく抗議している。
述べるまでも無く、パレスチナ自治政府にとっては、アメリカの経済援助が重要であり、アメリカの同盟国であるサウジアラビアの援助によって、支えられているのだ。それすらも反故にすることを、覚悟しての発言であろうか。
アメリカの援助を頼りに生きている国が、世界中には沢山あるが、今回の採決ではそれらの国々も、心を売りはしなかったのだ。明確に『ノー』をアメリカに突きつけたのだ。
投票結果は、エルサレム決定に反対する国が128カ国、棄権が35カ国、賛成した国がアメリカ、イスラエルを含めて9カ国だったが、その実態はグアテマラ、ホンデュラス、トーゴ、ミクロネシア、ナウル、パラウ、マーシャル諸島といった小国ばかりだった。
アメリカが言ったように、エルサレム決定に反対した国が、アメリカの援助を受けられなくなると、最も苦しむのは以下のような国だ。1位アフガニスタン2位エジプ3位イラク4位ヨルダン5位パキスタン6位ケニア7位ナイジェリア8位タンザニア9位エチオピアなどだ。
これらの国々の窮状をアメリカに代わって支えるのは、日本か中国であろうし、一部はヨーロッパの国々や、ロシアが支えるのではないか。
そうなると、今回のエルサレムをイスラエルの首都と認める、という宣言をトランプ大統領が出した結果、アメリカは完全に面子を失い、世界的信用を失った、ということであろう。しかも、今の時期は、アメリカ離れやドル離れが、世界的広がってもいるのだ。
アメリカがエルサレム決定に、反対した国々の全てに、経済援助をしなくなる、という事態は起こるまいが、その対象国となった国は地獄であろう。だが、そのような決定をアメリカが下せば、アメリカが国際社会のなかで、完全に孤立する、ということでもあるのだ。
それはロシアと中国との関係を強化し、極東地域でのアメリカ軍のプレゼンスを、脅かすようになるかもしれない。そのとき日本はあくまでも、アメリカの尻尾にしがみついていくのか、あるいは独自の外交を始めるのか、極めて重要なポイントに差し掛かっている、ということではないか。