『戦闘員の帰国はサウジアラビアとヨルダンに危機を生む』

2017年12月13日

 イラクやシリアでの戦闘に敗れた、IS(ISIL)の残党は、それぞれの母国に、帰国している。そのことが今後、これまで多数の戦闘員を、IS(ISIL)に送り出していた国にとって、極めて危険な状況を、生み出していくであろう。

 第一番目に多くの戦闘員を、イラクやシリアの戦場に送り出したのは、北アフリカの国チュニジアだったが、この国からは6000人の戦闘員が、IS(ISIL)戦列に参加した、と報告されている。

 そして、シリアとイラクに隣接するヨルダンは、三番目に多くの戦闘員を、送り出した国だ。それは、多くのパレスチナ難民を、抱え込んでいることと、シリアやイラクに国境で隣接していること、にあるだろう。

また、ヨルダン国内のシリア人難民キャンプには、IS(ISIL)の工作員が入り込み、IS(ISIL)の戦闘員を募集する、リクルート活動をしていた、とも言われていたが、それは事実であろう。

ヨルダンのなかでは、ハーリド・ビン・ワリード軍と呼ばれるテロ集団が、大きな勢力を維持しているが、その戦闘員数は1600人いるという報告が、2016年の段階で出ている。

彼らはヤルムーク渓谷の幾つかの村落に、集結しているようであり、サラフィー思想に傾倒している。シリアやイラクでは、IS(ISIL)というよりも、ヌスラ組織に近かった、ということだ。

その理由は、IS(ISIL)がヨルダンのパイロットの、カサースビを焼殺したことから、強い敵意を抱くようになったということだ。従って、ハーリド・ビン・ワリードの戦闘員は、IS(ISIL)と戦う意思を抱いている、ということだ。

このハーリド・ビン・ワリード組織のメンバーなどを始めとする、シリア・イラク帰りの戦闘員たちが、これからはヨルダン国内で、活動を活発化していく、ということだ。

アメリカのトランプ大統領の宣言した、エルサレムをイスラエルの首都、と認めたことに対して、ヨルダン政府は強い反対の立場を、明らかにしていない。そのこともイスラム過激派の、テロ活動を活発化させていく、一因であろう。

同じことは、サウジアラビアについても言えよう。サウジアラビアにも数千人のIS(ISIL)メンバーが、帰国しているのだ。彼らが何時、本格的なテロ活動を、始めるのかが懸念される。

それは、サウジアラビアにとっても、ヨルダンにとっても、共通の不安であろう。だからと言って、両国はアメリカとの関係に、距離を置くことはできない。王家の維持にはアメリカの支援が、必要なのだ。