『パレスチナ抵抗闘争開始と周辺の反応』

2017年12月 9日

 

 パレスチナのガザに本部を置くハマースが、128日の金曜日を、インテファーダ(抵抗闘争)の開始日と宣言した。事態はその通りになり、ガザ地区でもヨルダン川西岸地区でも、パレスチナ人による投石デモが、始まっている。

 結果的に、闘争初日の犠牲者は、死者が2人負傷者が300人だった、と報告されている。イスラエル側はデモ隊に対して、ゴム弾だけではなく、一部実弾を発射し、催涙弾も大量に使用している。

 この事態に対して、アラブ諸国やイスラム諸国は、どう反応しているかといえば、エジプトの宗教最高権威である、アズハル大学の大シェイク・タイイブ総長は、アメリカのマイク・ペンス副大統領との、会見を拒否している。ヨルダンのアブドッラー国王はパレスチナ自治政府のアッバース議長と、今後の対応を話し合っている。

 パレスチナ自治政府のアッバース議長は、アラブ・ムスリム社会や政府の、パレスチナ支持を歓迎し、感謝している。彼はこれではアメリカと話が出来ない、とアメリカとの対話に、拒否の立場を鮮明にした。彼が望むと望まぬとに関わらず、そうしなければ、彼自身がパレスチナ人やアラブ人を、敵に回すことになろうから、当然の対応であろう。

 イランでは大規模抗議デモが起こり、テヘランにいる友人は『外は大騒ぎだ、自分たちは安全なのかと不安がっている。』と伝えてきた。同じように、トルコのイスタンブール市でも、大規模なデモが起こっている。デモはそれ以外にも、パキスタンなどを始めとする、イスラム諸国でも起こっている。

 さて、イスラエルはどうなのであろうか。ネタニヤフ首相はトランプ大統領の決定を、大歓迎しているが、インテリ・ユダヤ人層からは、『問題の解決を困難にしただけだ。』と非難の声が上がり始めているし、イスラエル国籍を持つ、パレスチナ人のテイビ議員は、『トランプ大統領はイスラエル側に立っており、彼は仲介出来る立場に無い、彼こそが問題だ。』と強い抗議の立場を、明らかにしている。

 イスラエル政府はいま、最も肝要な問題である、パレスチナの土地への入植を、今後も進める方針を、明らかにしている。これでは問題はますます、解決困難になっていくことは、必定であろう。

 意外なニュースも流れている。それは、アメリカの大物ユダヤ人ビジネスマンのアデルソン氏が、選挙前にトランプ大統領支援組織に、アメリカ大使館のエルサレムへの移転を条件として、2000万ドル送った、という話だ。パレスチナは2000万ドルで売られたのか、と言いたくなる話だ。

 また意外なニュースが他にもある。アラブ・イスラム世界の緊急時に、サウジアラビアがジュベイル外相を更迭した、というニュースが伝わってきている。これはサウジアラビア政府が、パレスチナ問題への深入りを、避けるための手段なのであろうか。あるいは、単純なジュベイル外相の汚職関与であろうか。

 最後に、アメリカのテラーソン国務長官は『トランプ大統領の決定はあるが、アメリカ大使館のテルアビブから、エルサレムへの移設は、2年以内には無い。』という発言だ。これは何を意味しているのか。まさかトランプ大統領が、観測気球として、エルサレムをイスラエルの首都として、承認したとは考えられないのだが。

 テラーソン国務長官は『イスラエルとパレスチナの最終的解決は双方の話し合いによる。』とも語っている。なにやら話がぼけてきているが、それはアメリカ政府内に、一致した立場がまだ出来ていないからかもしれない。

それでもインテファーダで、今後は毎日のように、パレスチナ人たちが犠牲になって行くのだ。やりきれない話だ。