NO4764 12月4日 『トランプの大鉈・首都エルサレム承認とパレスチナ国家』

2017年12月 3日

 

 アメリカの大統領だと言うことは、世界のあらゆる問題を、自分の希望通りに変更することが、出来るという発想であろうか。トランプ大統領はイスラエル・パレスチナ問題で、大鉈を振るうことを、決めたようだ。

 トランプ大統領はイスラエルの首都を、イスラエルが希望するように、エルサレムに移転することを決め、アメリカ大使館をテルアビブから、エルサレムに移すことにした。ただし、その移転は6ヶ月後だ、とされている。

 このアメリカ大使館のテルアビブから、エルサレムへの移転問題は、既にアラブ連盟のなかで、大問題になっている。『パレスチナの首都はエルサレムだ』とアラファト議長が主張してきていたが、アッバース議長の考えも同じだ。

アラファト議長やアッバース議長の考えは、エルサレムを東西に分割し、それぞれが首都とするという考えであり、極めて穏健なものだが、イスラエルは全てのエルサレムを、イスラエルの首都にする考えだ。

 イスラエル政府はエルサレム全域を、首都とするためにパレスチナ人の居住区である、東エルサレムで次々とパレスチナ人の家屋を破壊し、住民の追放を進めている。これではパレスチナ側が首都としたくても、その段階ではエルサレムは、イスラエルによって全域を、支配されていよう。

 ヨルダン川西岸地区への入植でもそうだが、イスラエルは非合法に入植を進め、その後、政府は住民が暮らしていることを根拠に、後追いで入植を認めてきていた。勿論、承認以前の段階から、あらゆる便宜を図り、入植後の生活に支障が無いように、してきていたのだ。つまり、イスラエルは既成事実を根拠に、土地の所有を認める方針だ。

 そしていま、アメリカがエルサレムへの大使館移転を実行すれば、ますますイスラエルによる、パレスチナ人の土地奪取は、進むことになろう。パレスチナ人の住んでいない土地を、パレスチナ人のものだと主張することは、極めて困難になろうし、その奪った土地に建てられた、イスラエル人の家屋を破壊すれば、悲劇が生じ世界の同情を、買うことになろう。

 エルサレムばかりでは無く、トランプ大統領はヨルダン川西岸地区の土地についても、彼独自の考えがあるようだ。つい最近、彼が言い出したイスラエル・パレスチナ解決案は、ヨルダン川西岸地区の土地の半分はイスラエルに、残り半分はパレスチナの国家に、という考えだ。

 このヨルダン川西岸地区二分案が、彼の考えるイスラエル・パレスチナ問題の、解決案なのだ。極めて乱暴な考えであり、その事によって、イスラエル・パレスチナの間に、平和が訪れるとは、到底思えない。

 トランプ大統領はこの解決案で、中東和平を実現し、パレスチナ国家を設立し、ノーベル賞でも貰うつもりなのであろうか。それは案外ありうるだろう。あれだけアラブ人を殺しまくったオバマ前大統領が、『平和』のノーベル賞を、受けているのだから。