サウジアラビアとイスラエルは、アメリカを焚き付けて、イランを攻撃したい、と真剣に考えているようだ。そのことは、サウジアラビアとイスラエルが既に、裏では緊密な関係になっている、ということであろう。
この段階では、いままで語られてきたような、アラブの連帯もイスラエル敵視も、存在しなくなった、ということであろう。アラブ最強国のエジプトは、サダト大統領の時代にイスラエルと和平を結び、前線国であるヨルダンもしかりだ。
そして、最後に残ったアラブの大国サウジアラビアも、既にその段階に入ったということは、パレスチナ問題など誰も真剣には、考えなくなったということだ。強硬派のイラクのサダム体制が打倒され、リビアのカダフィも打倒されたいま、声高に現状を非難するアラブのリーダーは、いなくなったのだ。
アラブは何故こうまでも、変わってしまったのであろうか。一言で言えば、各国には自国の安全を、最優先で考えなければならない、緊張した状況が広がっている、ということだ。
サウジアラビアはイランの兵器開発、なかでも核兵器の開発に、大きな不安を抱いているし、イスラエルはイランの長距離ミサイルの開発と、核兵器開発に神経を、とがらせている。
しかし、いくらサウジアラビアとイスラエルが協力しても、イランを打倒することは、極めて難しい。もし、そうした行動に出れば、サウジアラビアの石油関連施設は、みな破壊されてしまおう。ほとんどがペルシャ湾岸サイドにあるため、イランにとっては簡単な、攻撃目標であろう。
イスラエルにしてみれば、長距離ミサイルでデモナの核施設を攻撃されるか、大都市テルアビブあるいはエルサレムを攻撃されれば、相当の人的被害が出ることになり、国家そのものの存続が難しくなろう。
そこで両国が考えたのは、イランとの緊張をあおり、イランの危険性を世界に訴えることにより、アメリカを巻き込んで戦争をする、という考えだ。イスラエルは強力なロビーストを、アメリカ国内に有している。彼らが活発な活動をするであろう。
アメリカはこの両国の考えにどう対応するであろうか。アメリカは中東問題では、極めて冷静に自国の利益を、優先している。しかし、イスラエルの安全をないがしろにすることは、アメリカの政治家なかでも大統領には、出来ない危険なものだ。
アメリカはサウジアラビアに対しても、応分の神経を使わざるを得まい。アメリカ・ドルの下落を支えているのは、サウジアラビアの資金であり、サウジアラビアの石油とドルが、リンクしているからだ。従って、アメリカはイスラエルとサウジアラビアの要請に、応えざるを得ないということだ。
この問題はアメリカ政界の戦争派と、和平派の対立でもあろう。アメリカの軍人や政治家のなかには、第三次世界大戦を望んでいる者たちがいる、と言われている。アメリカの疲弊した経済を立て直すにも、戦争は必要悪なのかもしれない。
レバノンのハリーリ首相のサウジアラビアでの、突然の辞任はこの計画の、ほんの一部でしかあるまい。レバノンで彼が暗殺される危険性がある、と発言したのはイランが殺そうとしている、ということなのだから。