『ISはほぼ終りその後にはヌスの台頭が懸念』

2017年11月 8日

NO4739 119          中東TODAY

 

 

 2014年ごろから突然巨大化し、シリアとイラクの相当部分を、支配するに至ったIS(ISIL)も、ここに来てどうやら、終りの時を迎えたようだ。それは戦闘に必要な、戦闘員と資金と武器の調達が、うまく行かなくなったからであろう。

 述べるまでも無く、それはサウジアラビアとカタールの資金であり、トルコが仲介役と退避所を、提供していたからだ。その背後にどの国がいたかは、馬鹿らしくて、述べる気にもならない。

 その何処かの国の目的が達成され、イラクとシリアはほぼその思い通りに、なるようになったから、店仕舞したのであろう。これまで何度も書いてきたので、バック・ナンバーを読んでいただければ分かろう。

 アメリカはジュネーブで開催される、シリア問題国際会議に賛成、と言い始めている。ロシアは勿論賛成なのだから、世界の2大超大国の意見が一致した、ということだ。これで大きな障害は、取り除かれたわけだから、シリアの和平が前進しないわけはあるまい。

 ただ、気になるのはアメリカの立場だ。最近になって、アルカーイダの系列のヌスラが、突然台頭してきていることだ。ヌスラはシリアのダマスカス界隈で、活動を活発化している、と伝えられている。

 アメリカの頭のなかには、いいまだにシリアのアサド体制を、打倒したいという意向が、あるのかもしれない。少なくとも、アメリカはシリアを幾つかの部分に、分割したいと願っていよう。北はクルド人に与え、将来は国家にまで格上げし、シリアの東部はスンニー派に与え、西部の海岸地域の一部は、アサド大統領のシーア派アラウイットの地域に、するということだ。

 アメリカは今回のアラブの春革命を発端とする、アラブ大混乱の流れのなかで、アラブの幾つかの国を、分断する作戦を進めてきていたのではないか。リビアは東西と南に三分割状態にあり、いまだ収拾が付いていない。

イラクはつい最近、クルド人の独立への住民投票があり、問題化したがやはりクルド、シーア、スンニーに分かれているようだ。少なくとも住民の気持ちはそうであろう。それは、そうした纏まりを作らなければ、ただ虐殺されるだけになってしまう、懸念があるからだ。

 アラブ世界はIS(ISIL)の、終焉を迎えたからといって、大喜びするわけにはいくまい。アルカーイダがあり、ヌスラがあり、それ以外にもイスラム原理主義テロ組織が、次々と誕生しているからだ。それらの組織は出番を待っているだけであり、消えたわけではない。IS(ISIL)は舞台をアフリカやヨーロッパ、アジアに移動しただけなのだ