NO4757 11月27日『シナイのテロとISの今後』

2017年11月26日

 シリア半島のエルアリーシュ市近くのラウダ・モスクで、IS(ISIL)が攻撃し、305人が死亡し、200人ほどが負傷した。まさに大惨事であろうし、これだけの犠牲が生まれたテロは、エジプトでは初めてであろう。

 エジプトのシーシ大統領はこの事件に対し、強力な反撃をすることを誓い、IS(ISIL)が立てこもっていると見られる、山岳部に対して、空爆を命じている。イスラエルは『何故エジプトはテロを、防げないのか。』と言っているが、それは簡単ではあるまい。

 シナイ半島はイスラエルの何倍もの面積があり、各地域は部族が支配しており、エジプト政府の統治権は及んでいない、というのが実情だ。それに目をつけたIS(ISIL)は部族に対し、武器や資金を提供して、抱き込んでいるのだ。

 今回のテロ事件では、スーフィー派のアル・アワーリカ部族が多く集まるモスクが、15人のIS(ISIL)戦闘員によって、狙われたようだが、IS(ISIL)にすれば、スーフィー派は異端であり、正統なイスラム教スンニー派ではない、ということになるようだ。

 シナイ半島はリビアなどから送られてくる、武器の密輸拠点であり、しかも、イスラエルへのゲートでもあることから、IS(ISIL)にしてみれば、格好の戦略拠点、ということであろうか。

 また、シナイ半島を支配し、エジプトの本土ともいえる、アフリカ北部地域に活動範囲を広げていけば、やがて、IS(ISIL)はイスラム教スンニー派の、最大の人口を誇るエジプトを、支配下に置くことが出来る、と考えているのであろうか。

 IS(ISIL)に参加する、エジプト人の数も少なくない。エジプト人はアフガン戦争でも、ビンラーデンの呼びかけに応え、多数が参加していた、という経緯もある。つまり、エジプトを落とせば、IS(ISIL)はとんでもない兵力を、有することになろう、ということだ。

 勿論、エジプトでのIS(ISIL)の活動が、自由になっていけば、エジプトの周辺国である、スーダンやリビアなど、北アフリカの諸国に対しても、進出し易くなる、ということであろう。

 今回の作戦の前には、既に北アフリカのエジプトの、いわば本土内のアレキサンドリア市や、カイロ市周辺でもIS(ISIL)によるテロが、行われていたが、シナイが荒れれば、エルアリーシュ市やシャルムエルシェイク市は、観光地としての意味を、成さなくなろうし、他のシナイの観光地も然りであろう。

加えて、紅海のアフリカ大陸側の観光拠点も、厳しくなくなる危険性があろう。紅海サイドのハルガダは、エジプトにとって重要な観光地であり、欧米やロシアから多数の避寒者が、多数訪れているところだ。

 それでは、今回のシナイ・テロは、IS(ISIL)に大きなメリットを、生み出したのであろうか。そうは思えない、シナイの部族の反発が強まった、と思われるからだ。そうなれば、エジプト政府側に、IS(ISIL)の情報を、流す者が増えるからだ。つまり、IS(ISIL)はシナイのテロ作戦で、墓穴を掘ったのではないか、ということだ。

エジプト政府も一層の本格的なテロ対応を、せざるを得なくなり、本土ではないからかまわない、といったことは、通用しなくなろう。イラクやシリアで敗走するIS(ISIL)が、エジプトでも敗走する日が、近く来るのではないのか。そうあって欲しいものだ。