NO4734 11月4日 『アメリカは中東基地変更検討か』

2017年11月 3日

 どうもアメリカ政府は中東地域の、アメリカ軍基地の変更を、考えているのではないか、と思えてならないような状況が、出てきている。これまで、アメリカ軍基地を設置していた、ホスト国との関係が、ギクシャクし過ぎているのだ。

 それはトルコであり、カタールであり、バハレーンだ。一方、アメリカはイラクやシリアでの、基地建設を進めているし、多分、サウジアラビアでもそうであろう、と思われる。

 まずトルコだが、アメリカはトルコの南東部にある、インジルリク空軍基地を使って来ていた。そこには核兵器も、持ち込まれているというのだから、トルコを安定した軍事協力国と、みなしてきていたのであろう。

 しかし、アメリか政府は既に、このインジルリク空軍基地を手放してもいい、と言い出している。これはトルコ政府の軍事作戦に、アメリカが協力しなかったことが理由で、売り言葉に買い言葉の応酬があり、その後に出てきたものだ。

 カタールの場合はそこまで悪化してはいないが、カタール政府がイラン政府と関係を強化しており、その背後にはロシアがいる。イランとの関係が前進していることから、既にカタールには相当数の、イラン革命防衛隊員が私服で、入り込んでいるということのようだ。

 こうなると、イラン革命防衛隊員はアメリカ軍の、情報収集活動をするだろうし、場合によっては、武力衝突が起こる危険性も、あるということではないのか。いずれにいても、多数のイラン革命防衛隊員が、カタールに入ってきていることは、アメリカにとっては、極めて不愉快なことであろう。カタールにはアメリカ軍の、巨大な基地があるのだ。

バハレーンについても同様だ。バハレーンは大分前からアメリカの第5艦隊が、基地としている国であり、極めて重要な国だった。そのバハレーンとアメリカとの関係が最近ギクシャクし始めているのだ。

それではこれらの既存の基地を、アメリカが移動するとすれば、何処に移動していくのか、という疑問が沸いてくる。トルコの場合は、アメリカが既に語っているように、シリア国内にもイラク国内にも、何十という基地が建設されており、トルコにこだわる必要はない。

ドイツの場合は、インジルリク空軍基地から撤収し、ヨルダンに変更している。アメリカもヨルダンの基地を、使う可能性は否定出来まい。アメリカがこの地域に、軍事基地を持とうとする意図は、アラブ湾岸諸国への介入と、イスラエルの防衛が目的であろう。そう考えれば、シリアやイラクの方が、トルコよりも近いわけであり、便利だということになろう。

カタールのアメリカ軍基地は、もともと、サウジアラビアから移動させたものであり、サウジアラビア国内にはアメリカが建設した、巨大な基地が今でもあるのだ。以前、サウジアラビアがアメリカ軍に移動して欲しい、と言ったために、カタールに移動したのであり、いまのように、ムハンマド・サルマン皇太子との関係が、強化されているなかでは、サウジアラビアの基地に戻ることは、十分ありうる話であろう。

 バハレーンとの関係が悪化してきているのは、バハレーンのナースル・ハリーファ王子に、外交ビザの発行をしなかったためだ。アメリカ政府が彼にビザを発行しなかった理由は、彼が拷問を行っていることに起因しており、人権組織からの強い働きかけがあったからだ、と伝えられている。

 サウジアラビアとの関係が促進されれば、アメリカはバハレーンの海軍基地を捨てて、サウジアラビア領土内に海軍基地を、開設することは容易になろう。

 さて、それでは何故アメリカはこの時期に、中東各地にある基地を移動させようとしているのか、という疑問が沸こう。それは戦略的大変更であり、友好国と非友好国を明確に分ける、ということではないのか。友好的協力的でない国については、その国家と体制の維持に、協力しないということであろう。

 勿論、基地の変更とその建設再整備の費用は、受入国が相当部分、負担することになろう。アメリカの腹はあまり、痛まないのだ。アメリカはいま中東地域各国に対して、踏み絵を踏ませているのかもしれない。