NO4732 11月2日 『トルコの経済数値は信用できるか』

2017年11月 1日

 トルコ政府の官僚たちは、自国の経済が相当悪化していることに、気がついているのであろう。エルドアン大統領が外国から借り入れた資金で、メガ・プロジェクトを推進しているのだから、無理もなかろう。

 エルドアン大統領にしてみれば、自分が最高権力者の立場にいるうちに、出来るだけ多くの資金を、国家から騙し取ろう、という考えなのであろう。メガ・プロジェクトに参加した企業は、喜んでエルドアン大統領に、賄賂を渡すということだ。

 エルドアン大統領のメガ・プロジェクトばかりではない。彼の失政の結果、幾つもの経済への、悪影響が生まれ、貿易は悪化し、貿易赤字は今年9月までの段階で、遂に、538億ドルに達している。

 当然のことながら、国家財政も悪化しているが、それを表に出すことは、エルドアン大統領の怒りを買い、更迭されるだけではなく、刑務所送りになってしまう、恐れがある。このため官僚たちは、各種の数字のマジックを、使っているようだ。

 それでもごまかせない部分はある。それは貿易赤字などであり、これはIMFや外国の政府が出す数値で、ばれてしまうのだ。トルコが外国と取引している数値は、外国も正確に、把握できるからだ。

 結局、トルコの官僚たちが使うのは、外国に正確に把握され難い、数値に対する操作ということになる。国内の観光収入が増えたとか、武器の輸出が増えたとか、外国からの投資が増えたといったことだ。

 観光収入については、トルコ政府は今年37・6パーセント(40パーセントとも報じられている)増えた、と発表しているが、果たしてどうであろうか。これはトルコ国内だけのものであり、いかようにでも誤魔化しが効こう。武器の輸出も正式な輸出だけではなく、裏取引もあるのだ。

 また外国からの投資も、カタールのような場合は、正確な数字を示さないのが、普通なのだ。個人投資家たちは、旅行鞄に巨額の紙幣を、詰め込んで持って来る、とも言われている。これでは、実際にどれだけの金が動いているのか、正確に把握し難い、というのが実情だ。

 しかし、トルコがいま経済的に、難しい状況に置かれているのは、事実であり、それを抑えるために、エルドアン大統領は中央銀行に、金利の凍結を命じている。だが、現場ではその結果、物価高が起こり、インフレの悪影響が、トルコ国民全体の生活に、及んでいるのだ。

 トルコ政府の発表によれば、インフレ率は11パーセント前後であり、失業率も12パーセントだと発表しているが、実際の数値は、もっと高かろう。青年層の失業率は既に、20パーセントを超えているのではないのか。誤魔化しは所詮、誤魔化しであり、それによって経済が改善された、という話は聞いたことがない。