『トルコのマネー・ロンダリング問題と対米関係の悪化』

2017年10月23日

 

 トルコとアメリカとの関係が、悪化してきているという報告を、何度か書いたが、ここに来てその悪化の主因は、トルコとイランとの間で行われてきた、マネー・ロンダリングに絞られてきたようだ。

 アメリカのワシントンにある、外交評議会中東アフリカ研究の、シニア・フェローであるステーブン・クック氏が、詳細な報告書を作成した。それによると、トルコとアメリカとの関係が悪化することは、アメリカとトルコとの関係はもとより、NATOとトルコとの関係にも、大きな悪影響を及ぼすことに、なるということだ。

なかでも、トルコのインジルリク空軍基地の使用に、大きな影響が出てくるということだ。この基地はアメリカやNATOにとって、戦略的に極めて重要な意味を、持っているからだ。

 アメリカやNATOはこの基地を使って、シリアやイラクのIS(ISIL)掃討作戦を、行ってきていたし、アフガニスタンやコソボ、エーゲ海作戦にも、活用いてきていたのだ。しかも、インジルリク空軍基地には、アメリカによって大量の核兵器が、持ち込まれてもいるのだ。

 トルコとアメリカとの関係は、イランで生まれ、イランとトルコの二重国籍を有する、レザ・ザッラブ氏のマネー・ロンダリング問題で、いま大きく揺れている。この問題の進展によっては、多くのトルコ政府の高官が、厳しい状況に追い込まれることになる。

 そのなかには、エルドアン大統領はもとより、彼の家族も含まれるし、エルドアン大統領と親しい閣僚たちも、引き込まれる可能性が高い。また、トルコの国立銀行もこのスキャンダルには、絡んでいるのだ。ステーブン・クック氏に言わせると、現在のトルコ・アメリカ関係は最悪のレベルであり、これはトルコがキプロスに軍事侵攻した、1974年以来の最悪の関係だ、ということだ。

 アメリカ国内では、既に多くのマスコミが、このマネー・ロンダリング問題を報道している。つまり、アメリカ国民の多くの、知るところとなっているのだ。トルコ・アメリカ関係協会のビュレント・アリリザ氏は『汚い血が双方の体の中を流れている。』と評している。

 このマネー・ロンダリング問題をきっかけに、いまトルコとアメリカとの間で、問題になってきているのは、F-35戦闘機のトルコへの供与だ。アメリカはトルコが信頼するに値するか否かに、疑問を抱き始めているのだ。

当初、F-35のトルコへの供与は、2019年に予定されていたのだが、それが実行されなくなれば、エルドアンは国内外で、面子を失うことになろう。もちろん、そうなればエルドアン大統領は、ロシアに輸入先を変更する、と騒ぎ立てることによって、西側諸国に圧力を、掛けようとするだろう。

しかも、ロシアからの戦闘機の輸入は夢ではない。S400をロシアから輸入する、仮契約は出来ているのだから。